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心の傷を癒すということ《劇場版》のhiyoriのレビュー・感想・評価

3.9
NHKドラマ「心の傷を癒すということ」を再編集し、劇場版として公開。脚本家の桑原亮子と総合演出の安達もじりというドラマの畑で心に残る作品を残してきた二人の作品が映画になっても、その質の高さは損なわれないどころか、むしろ映画にすることで安和隆という人物の生涯を凝縮して伝えることができたのではないだろうか。和隆は人の為、社会の為ではなく自分の為に人の心を理解したいと言う理由から精神科医を志す。それはきっと彼が在日韓国人として、マイノリティに対して不寛容な社会と成功することで他人に認めさせようとする父との間で育ち、人と生きるという考え方が損なわれたからだろう。阪神淡路大震災が起こり社会の為にが必然的な状況下で、自分が安心したいから誰かを安心させる。それが結果社会の為になる。誰かの為に生きて一つにならなければならない現代社会において、この大いなる矛盾が愛おしく感じる。押し付けがましくもないし、優しさの押し売りでもない。すべては心から生まれた物語だ。エピローグの神戸は和隆と同じ思いを抱えた幾千万人の誰かの心で出来た街に違いない。「君の鳥はうたえる」「火口のふたり」に続いてやはり柄本佑は主演で観たい俳優だ。
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