セリーヌ・ソンの作品。シンプルなストーリーでかつ明らかに小規模な映画ながらちゃんと魅せる映画になっているのが凄い。一見いかにもフィクション的な内容に見えなくもないが、現代の恋愛劇としてSNSやテレビ電話を活用した再会の仕方や感情の流れに説得力があり、そのディテールがしっかりと本作を現実味のあるものにしている。リモートで再会した時と実際に対面した時の反応の違い、互いに対する細かな態度や仕草、視線の交換などに関係性の変化が読みとれる。ほぼ登場人物は3人くらいのに過剰な演出を抜きにして丁寧な脚本と芝居だけでこれほど上質な作品になっていることに驚かされた。こういう作品があるからこそやはりA24からは目が離せない。そして何よりも撮影の良さが名作を名作をたらしめることを裏付ける作品でもあった。遠近を上手く使いこなしハッとするような構図で恋愛がもたらす心の空白を肯定している。
