ユウサク

モーリタニアン 黒塗りの記録のユウサクのレビュー・感想・評価

3.7
メインキャストをジョディ・フォスターしか知らなかったのでカンバーバッチにテンション上がってザッカリー・リーヴァイにテンション下がった……。
スラヒ役の人、どっかで見たことあるなと思ったら『ダゲレオタイプの女』のタハール・ラヒムだった。これ系の作品は奮闘する弁護士側に重点を置いてわかりやすくカタルシスを作ることも出来たと思うけどあくまでフラットに事実を描き、被害者の視点を多めに描いているのが良かった。

最初なんでアメリカの軍人をガンバーバッヂがやってるんだろうと思ってたけどそういえばイギリスのBBC制作だって気付いた。アメリカではこれを作れなかったってことなのかな。日本公開はズレてるけど『カード・カウンター』は同じ時期の制作で同じような出来事を描いてたからスラヒの手記に関する作品は誰も作りたがらなかったとか?今作は拷問のシーンもある程度映像が凝っていてあくまで見せるものとして撮られていた気がするけどカード〜の方は不快さに全振りしてる感じだったな。フラッシュ焚いてメタル聴いて、っていうシチュエーションは『ザ・コンサルタント』で主人公が「最大級の外的接触」として自らやっている行為でもあったからそれを思い出しもした。強制的な性行為って拷問の手段としても問題だし女性軍人の扱いにも問題があるしで惨たらし過ぎる。

この作品はビスタサイズにシネスコとスタンダードを格納し、ラストのフッテージのみビスタサイズという少し変なパッケージになってるので劇場で見たらちょっと違和感強いかも。普通にシネスコの中にスタンダードを格納する手段もあったと思うけど最後の一回のフッテージのためにビスタを優先したのかな。テレビで見る分には問題ないしスタンダードがちゃんと枠の上下いっぱいに入ってるのでむしろ良い。
このスタンダードサイズのパートの映像がやたらカッコよく感じて、制作側としては綺麗でまとまってる印象の現在シネスコと粗くて暴力的な感じがする過去スタンダードというつもりだったと思うけど、あんまりそこの対比は上手くいってなかったかもしれない。自分がスタンダードサイズ好きでフィルム(っぽい)映像が好きだからというのも多分にあるとは思う。

日本に生きる人間はこの映画を見て「これだからアメリカは〜」と責められる立場ではない。今この時にも入管では人が痛めつけられ殺されている。決して海の外だけの話ではないことを肝に銘じる。
ユウサク

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