のぢ

狂猿ののぢのレビュー・感想・評価

狂猿(2021年製作の映画)
4.7
カ・サ・イ! カ・サ・イ!

「デスマッチのカリスマ」葛西純のドキュメンタリー「狂猿」を見ましたよ

デスマッチというプロレスの中でもよりデンジャラスな戦いに身を投じる葛西純の生き様をスクリーンで余すところなく体感した

松永光弘、本間朋晃、竹田誠志、伊東竜二、佐々木貴、藤田ミノル、ダニー・ハボックなどデスマッチの名手たちが語る葛西純を知れるというだけでもプロレスファンとしてはもうたまらない映画だった

俺が葛西純の試合を見たのは、2019年の「タカタイチマニア2」でのエル・デスペラード戦。
それまで大日本プロレスでデスマッチに触れてはいたものの、葛西純の試合は生で見たことは無かった。
試合は無効試合になったものの、会場が本当に大熱狂の渦に巻き込まれ、その日1番エキサイトした試合で、俺が葛西純に魅了され、惚れさせられた試合だった。
その後FREEDOMSに何度か足を運び、その度に強烈なまでの刺激を受けてきた。
今回そんな葛西純のドキュメンタリーが公開されるということで、満を持して鑑賞。

去る2019年のクリスマスで、首と腰のヘルニアにより無期限活動休止を宣言。
その後の2020年6月の復活までを描く

リングの外では家族思いの一面を見せ、「ああ、葛西純も人の親なんだな」としみじみしつつ、心が暖かくなった。

活動休止と新型コロナのダブルパンチでやりたいことが無くなって「デスマッチED」「プロレスED」になってしまったと言う葛西の目はどこか寂しそうだった。怪我とコロナ禍で眠れる夜が続き、酒の量が増えた。体型もだらしなくなってしまった。

しかし、ひとたび復帰が決まれば猛烈なトレーニングで体を絞り込み、イキイキとカミソリを買い込み凶器を作る姿は根っからのデスマッチファイターなんだということを、再発見させてくれる。血が吹き出し、肉を切り裂き、時には肉片が飛ぶような壮絶な試合映像は、葛西純の、いや、デスマッチファイターたちの命の煌めきが凝縮された宝箱のようだった。

そんな痛みがスクリーンを貫通してくる本編とエンドロールで、どれだけ傷だらけになろうと、死ぬような思いをしようと「刺激の足りないヤツ、居場所のないヤツ、この葛西純の背中についてこい!」とプロレスの世界を爆進する姿はまさに「デスマッチのカリスマ」だった。
改めて俺は葛西純という男に惚れ直した。

この映画が撮られたのは2019年の「ブラッド・クリスマス」から2020年の9/8まで
その間のプロレスの応援スタイルの変遷をごく間近で見られるのも貴重な映像だと思う。2020年2月頃ではまだ声を出して応援している映像が見られる。

1年ちょっと静かにしていただけで、ここまでスポーツの応援の形が変わってしまったのか、というのをまざまざと見せ付けられ、早くコロナ禍が終わって心いっぱい声援を送りたい!という気持ちがより強くなった
プロとして「熱狂の空間を作り出す」「コロナを忘れされるような試合をする」というプロとしての心構えは、畑は違えど、人の心の支えなる仕事をしている自分にはすごく刺さる言葉だった。
そのために自分に何ができるか、その事を考えて、仕事と自分に向き合う姿勢を持ちたい!と思った
そしてその行き先に時には葛西純の背中にその答えを求めて、俺はFREEDOMSの会場に足を運ぼうと思う。
のぢ

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