のぢ

キラーコンドーム ディレクターズカット完全版ののぢのレビュー・感想・評価

3.3
その名を知ってから、ずーっと見たかった「キラーコンドーム」をようやく見ることが出来ました!ありがとう、エクストリーム!

見始めて違和感を感じるなーと思ったら、ニューヨークが舞台なのに、全員ドイツ語喋ってる?! 調べてみたら、この映画はドイツで制作されたドイツ映画。そりゃドイツ語喋るよねって話なんですが、舞台がニューヨークなので違和感がすごい。

そして主人公はイタリア系の「マカロニ刑事」…もう出だしから国籍がごちゃついております。マカロニ刑事は絵に書いたようなステレオタイプのハードボイルド。サングラスにトレンチコート、口元には常にタバコ…ついでにキザな独白が出てくる、チャンドラーの小説あたりにいそうなタイプ

そんなマカロニの元に、一夜にして4本のチン○が食いちぎられるという怪事件の一報が届き、事件解決のために現場のラブホテルに向かうと、なんとそこには人間のチ○ポを食いちぎるコンドームが!「キラーコンドーム」と名付けられたその化け物を根絶すべく自身も32センチ(!)のキャノン砲を持つマカロニ刑事がニューヨークを奔走する!
このキラーコンドームのデザインがエイリアンをデザインしたH.R.ギーガーってそれほんとかよ…と思ったが、しっかりスタッフロールに名前が乗っててたまげた。言われてみればチェストバスターによく似てるわ…

ふざけた内容かと思いきや、作中でのメッセージは非常に真面目。
というのも、マカロニ刑事はゲイであり、劇中でも美青年の男娼ビリーとよろしくやってたり、元警官の同僚に狙われたり。キラーコンドームの事件は「ゲイや売春婦が起こしたもの」としてまともに取り合ってもらえず、マカロニがキラーコンドームの被害にあってタマを片っぽ失った時は、タマタマ1発ヤろうとしたなんの罪もないビリーが指名手配される始末。そんな汚名をそそぐべく奔走するという内容にもなっている。元々1990年代の公開ということもあり、エイズに重なる部分がある。エイズも昔は「ゲイがかかる不治の病」として恐れられ、蔑まれ、差別の原因となった過去がある。今ではそんな誤解も薄れてきたが、ここに至るまでには様々な人々が涙を流して誤解を解こうと頑張ったのだろう。

今作の悪役はキリスト教の原理主義的思想を持ち、子孫を残せないゲイや避妊をさせない為にキラーコンドームを作り出した。まるで差別や反避妊を体現したかのようなキャラであり、銃という暴力装置さえ持ち出して、ゲイや避妊を糾弾する

しかしマカロニ刑事は、そこに暴力をもって答えるのではなく、深い愛情と情けで犯人を時伏せようとする。
ゲイへの差別的な目や、避妊をすることへの批判をするのではなく、そこにある愛を理解して育むべきだと真っ向から伝えてくれ、暴力ではなく正しいことばと正しい行動で理解を深められるようにしようという、真っ直ぐなメッセージが、今の多様性社会へこそぶっ刺さる名作だと思います。

追記:などという感想をツイッター(現X)に投稿したところ、キラーコンドームの感想ツイートキャンペーンに当選しました
景品のポスターは後生大事に飾らせて頂きます。ありがとうエクストリーム!
のぢ

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