しゃべうん

アウシュヴィッツ・レポートのしゃべうんのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

「サウルの息子」で、ゾンダーコマンドたちが収容所の様子を外に伝えようとする様が描かれていたが、この映画はそこがメイン。ヴルバ=ヴェツラーレポートというアウシュビッツの実情を書いた報告書は、国際的な圧力を高め、ハンガリーからの12万人のユダヤ人移送を防いだ。

映画としての出来は微妙で、序盤説明不足なせいで誰が何をしようとしているのかわからない。また、収容所からの脱走劇がメインで描かれている為に、そのレポートがどのようにして世に出たかの苦心も伝わらない。「サウルの息子」をリスペクトしたようなカメラワークがあるところから、監督の”勉強”は伝わってくる。

1秒ごとに同胞が殺されているような状況で、大国の思惑に揉まれ、このレポートが世に出たのは2人の脱走から数ヶ月後だった。衝撃的なのが赤十字が収容所の視察をし、支援物資を送っていたこと。この酷い状況を見抜けなかったのか、それとも見て見ぬふりをしていたのか。
こういった状況は、また起こりうる。監督が1番作りたかったのはヴルバとヴェツラーの脱出を描く本編よりも、現代の差別主義者や、移民排除を訴える政治家の演説が流れ続けるエンドロールだったんだと思う。また起こりうる、というか起こっている。今。当時の世界の人たちは今の私と同じで、「なんかあの辺りの地域揉めてて大変そうだよね」という、それくらいの認識だったのかも知れない。いざ隠された真実が世に出たとき「知らなかった」で済まされるのか。でも私もきっと言うんだろうな、知ろうともせずに「知らなかった」って。