にゃーめん

カラーパープルのにゃーめんのレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
3.9
「女性で、黒人で、貧しくて、下働きの私でも、生きている!」

スピルバーグ版は未見。
1900年代初頭に黒人として生まれた女性の一代記。

父親から虐待を受け、望まない妊娠で産んだ子供は取り上げられ、見ず知らずの男の元に嫁がされたセリーの境遇が悲惨すぎて、ミュージカル映画でなかったら冒頭から心が耐えられそうになかったので、前向きで力強い歌とダンスに救われた。

家父長制の悪い所全部詰め込んだようなクソな父親の元で、悲惨な日々を共に乗り越えた妹ネティ(ハリー・ベイリー)との印象的なシーンとして、セリーの母親が遺してくれた裁縫セットをネティが嫁入り道具として持って行くように渡したシーンが後半にガツンと効いてくる伏線は思い出しただけでもウルウルしてしまう。🪡🧵

黒人で女性というだけで自分の持っている能力を社会から過小評価され、差別に苦しむという話は、「ドリーム(原題:Hidden Figures)」(2016)でも扱われていたが、その「ドリーム」の主役でもあった、タラジ・P・ヘンソンが、本作でも求心力のあるブルース歌手のシュグを演じており、バツグンの存在感であった。

黒人女性の憧れ(自由奔放に人生を謳歌する歌姫)のような存在のシュグの登場で、セリーが、神が創造した美しい花="紫の色(カラーパープル)"のように、自分の人生も美しくしたいと目覚めていく展開がとにかく胸熱。

無能で不細工な女だとDV夫に日々虐げられていたため、笑顔を見せないセリーが、シュグに初めて口紅を塗ってもらい、「"色のついた笑顔"よ」と言われ、はにかむシーンは自分の個人的な体験とも重なり、忘れられないカットだった。

女性はメイクをすることで、自尊心を高めることができ、堂々と振る舞えるものなのだ。

サリーを鼓舞し、男性にに立ち向かう勇気を与えてくれる女性の存在として、外せないのが、ソフィア(ダニエル・ブルックス)

ソフィアの持ち歌の「Hell No!」はとにかく痛快。立ち上がって拳を突き上げたくなるほど高まってしまった。
女性を殴るような男性はおとといきやがれ!こっちから願い下げだ!と啖呵を切り、結婚式の写真立てごと叩き割って沼に投げるという、勝ち気な姉御の振り付けが、もうたまらなくカッコ良かった!
しかし、暴力はいけない(苦笑)

シュグやソフィアのような、自己肯定感お化けのような心身ともに強い女性達に感化され、今まで我慢してきた鬱憤をぶちまける、サリーの食卓でのシーンは忘れられない。"死んだ馬のクソ袋"って翻訳は字面からして強過ぎるな?(笑)

不遇な身の上に負けじと自分の腕一本で稼ぎ、男性に頼らず自立して自己実現していく、心身ともに逞しい女性の話に元気を貰いたい人に是非お勧めしたい一本である。

字幕は石田康子さん。直近ではケイト・ブランシェット主演作を担当される事が多かったようで、パワフルな女性が活躍する作品でよくお名前を見かけるなという印象。
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