不乱苦

カラーパープルの不乱苦のレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
5.0
スピルバーグ監督版は未見。
素晴らしい。お見事。大好き。
とにかく歌が圧巻。みんな歌唱力がすさまじく、ひたすら心が揺さぶられる。
キリスト教の思想がベースになっているので、ちょっと飲み込みづらいところもある(共感させようとしてるのかどうかが、登場人物の顔から伺うようなところがある)。音楽がゴスペル中心(タラジ・P・ヘンソン演じるシュグが、最後に牧師であると和解して、ブルースからゴスペルに回帰するところなど、アレサフランクリンの映画「リスペクト」を連想した)だし、サリーのクソ夫が、野垂れ死ぬかと思ったら悔い改めることで再生するなんて、日本映画ではちょっと起こらなさそう。しかし、だからこそ本作は魅了的でもあり、ほとんど黒人のみで構成される俳優陣の中で、数少ない白人として登場する「差別意識に自覚がないクズ権力者」の存在が描かれるのは、サリーを抑圧する社会すらもまた別の抑圧を受けていることをやはり踏まえなければならないのだろう。
ダニエル・ブルックス演じるソフィアが実に魅力的で歌唱力もずば抜けているが、徹底的に抑圧されてひたすら暗い顔をして小声で話し続けるサリーが復活と再生を経て歌い上げる後半は、もうずっと涙目でスクリーンを見つめていました。
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