しん

シャドー・ディール 武器ビジネスの闇のしんのレビュー・感想・評価

3.0
本作で薄気味悪いのは、記者や市民が果敢に(時にはヒステリックに)疑問を投げ掛けて、軍産複合体の幹部やアメリカの歴代政権の高官はそのときにオドオドしているにも関わらず、彼ら(サッチャー以外ほとんど彼女は出てきません)がやりたいことを結局成し遂げてしまっている点です。

テロとの戦争という標語が完成したことで、いつでもどこでも戦争(という武器の見本市)ができるようになりました。しかもズルいのが、アメリカやイギリスといった民主主義国に基礎を置く軍産複合体が、サウジアラビアなどの権威主義国を媒介にすることで、好き放題やるという構図です。これでは当然シビリアン・コントロールが効きません。

本作ではレーガン、子ブッシュ、オバマ各政権が問題の根幹に置かれていました(サッチャーやブレア、ネタニヤフなどは、アメリカのフォロワーでしかなかったですね)が、トランプ政権でもこの構図は変わっていないでしょう。さて、バイデンはどう振る舞えるのでしょうか。アメリカのロビーに浸透した軍産複合体の資金から逃れるのは容易いことではないでしょうから、結局営業マンになってしまうのでしょうか。それとも。

個人的にはもう少し淡々と描かれていると思っていたので、かなりドラマチックな展開に驚きました。もう少し落ち着いたトーンの方が、むしろ背筋が凍る感じを味わえたのかなと思います。
しん

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