このレビューはネタバレを含みます
終戦間近、ジャワ島の日本軍俘虜収容所に生きた捕虜の男たちと軍曹たちとの物語。
「時代のせい」と言ってしまえばそれまでだ。ヨノイもハラも、自分が正しいと信じ込ませたのは時代だ。笑ってしまうくらいの人権侵害や暴力、そもそも戦争を、本気で行っていたのだ。
ヨノイはどこかで、お国のために捧げる自分に戸惑いが少しずつあったのではないかなと思う。その自分では認めたくない反抗心が、人の姿形をして現れる。(=セリアズ)
そしてヨノイの鱗が少しずつ剥がれていくのが、セリアズにはきっと見えていた。あのキスが、ヨノイの最後の砦を壊す。
形見として髪の毛を切り、敵に敬礼をする。それがヨノイの、あの戦地における最大の愛の表現だった。
戦闘シーンはひとつも描かれない。処刑と自害以外で殺しは行われない。それでも、あの極限状態で人々はどれだけ精神状態ギリギリだったのか、静かに、ヒリヒリと伝わる。
クリスマスの夜、酔ったハラがクリスマスプレゼントに、とセリアズとロレンスを釈放する。クリスマスは聖なる夜でなきゃいけない。どんな状況下でも。