旅するランナー

にしきたショパンの旅するランナーのレビュー・感想・評価

にしきたショパン(2020年製作の映画)
4.1
【音楽のフォースと共にあらんことを】

思っていたよりも硬派でドラマチックで昭和チックな、ピアニストの愛憎物語。
若きピアニスト凛子と鍵太郎に起こる、阪神淡路大震災、局所性ジストニアなどの試練。
夢破れた鍵太郎はダークサイドに落ち、ポーランド人ピアノ講師の帝国で悪の道に走る。
凛子が奏でるショパン・ラフマニノフ曲の音楽のフォースで、彼を救い出すことができるのか。
スターウォーズのレイとカイロ・レンを思わせる、ふたりの心の葛藤が描かれます。

結局、高校時代の教師、達磨先生による教え「面壁九年」(達磨大師が中国の嵩山少林寺で壁に向かって九年間坐禅を組み悟りを開いた故事から、一つのことに忍耐強く専念すること)がキーワードになっています。
フォースが善悪に使われるように、ピアノを続けることに優劣はないのだ。
この師匠は、マスターヨーダのようだ。

全体的に演技・編集・録音には若干のたどたどしさは感じます。
でも、西宮から新たなスターが生まれるかもしれません。
ピアノを演奏される方の心をグサリと突き刺し、ピアノ曲が好きな音楽愛好家の心をジワリと震わせる佳作です。