マルチェロのラストの表情が焼き付いた。
ノーベル賞作家アルベール・カミュのベストセラーをルキノ・ヴィスコンティが映画化。人の心理に潜む不条理の意識を巧みに描いた作品。
他作品のような格調高い貴族映画のイメージとは全く違って、良い意味で裏切られる。そして、難解とされる原作を解りやすく映像化させる脚本と演出はかなり貴重でもある。
母の死も、恋人の存在も、全てが虚しいと感じている平凡な男ムルソー(マルチェロ)。前半の、のらりくらり掴みどころのなさが、後半になってガラッと変わる。そしてぐんぐん引き込まれる。法廷シーンからラストに至ってはのめり込んで観てた。
アンナ・カリーナは、ヴィスコンティ或いはマルチェロとの組み合わせの違和感が最後まで付きまとったけれど、当時27歳、やはり流石なスタイルと存在感、一筋の涙も印象的だった。
独房でのムルソーと神父のやり取りは舞台をも思わせ、これまた引き込まれる。いや息を飲む。
濃厚な心理描写は勿論、主人公の孤独さを描いたヒューマンドラマでありながら、宗教的背景や政治的側面も持ち合わせた今作に、とんでもない奥行きを感じる。
そして到底理解が及んでないだろうなぁ…とも。
今作もまた再見必至!原作が読みたくなる、そして思考を深めたくなる作品だった。