すずき

ローズメイカー 奇跡のバラのすずきのレビュー・感想・評価

3.7
エヴは父から受け継いだ、従業員1名(事務員)の小さなバラ農園の社長。
しかし昨今のバラ品種コンクールでは、大企業によるものが8年連続で受賞しており、いまやエヴ農園の経営は風前の灯。
繁忙期に従業員も雇えないほど困窮したが、事務員ヴェラの一計で、職業安定所から格安の給料の素人を派遣してもらう。
こうして、内気な陰キャ女子、50代定職なしのオッサン、前科者の3人が集まった。
果たしてエヴはこの3人と共に、経営難を乗り越える事が出来るか…

フランスのバラ農園を舞台にしたサクセスストーリー。
バラに関して全くの素人の社会不適合者たちが、なんやかんやトラブルを起こしつつも最終的に上手くいく、王道のストーリー。
予定調和とも言えるけど、その真っ直ぐなストーリー展開は、疲れていた時に見るのに丁度良かった。
色とりどりのバラが咲き誇る農園もキレイだし、癒されちゃうな。

ただ、一ついい意味で意外だったのは、主人公エヴのキャラクター。
設定を聞くと、てっきり上品なマダムかと思ってたら、案外…メチャクチャな人ですね。
まず3人を雇って最初にさせる仕事がガチ窃盗。
ストーリーの大筋自体は先述の通り、王道なものなんだけど、たまにメチャクチャするのがいいアクセントだった。

家族との不和問題も、安易に仲直りさせるわけじゃなくって、そんな親なら捨てちゃえば?と卒業を促す所も良い。
事情を知らない人ほど良好な関係にしようとするけど、たとえ家族でもどうにもならない人や関係ってあるからね。
憎しみも愛もあるだろうけど、それらの感情を全てひっくるめてバラの花束で別れを伝える所がフランスらしいシャレオツなセンスを感じた。

悪役として、ライバル大企業の社長が出てくるけど、エヴは考え方の違いから彼を全く受け付けない様子だけど、悪人というわけでもなさそうなのよね。
ただビジネスとしての考え方がしっかりしていて粋じゃないから、職人肌で江戸っ子のエヴは一方的に嫌っている。
互いに半歩ずつ歩み寄る未来もあったかもしれないが、それこそどうにもならない間柄だったのかも。