ぜろ

ウォンカとチョコレート工場のはじまりのぜろのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます



完全なポールキング映画

・ルフィじゃん
・魔法薬の錬成みたいなチョコ作りとか毛の生えるお菓子とか、かなり結構ヤバいものをよくわからない方法で作っていて、バートン版とかワイルダー版はそこを若干不気味なものとして見ているんだけど、そういう感じもない。本当にハッピーポールキング映画、ロアルドダールの毒のある要素はかなり薄いので、それを楽しみにしている人にはけっこう肩透かしだと思う。
・食べると浮くお菓子というのはワイルダー版の最後の方に出てくるガスで浮く炭酸ジュース(だっけ?)の画
・動物園の警備員は、ポールキング映画に絶対にいつも出てくるサイモン・ファーナビーさん。パディントンでもいつもなぜか役に立たない警備員の役で、今回もいい役に立たなさだったっていうかだいぶ台詞多かったな? 
・サイモン・ファーナビーは脚本にもクレジットされていて、キングとはBBCのシットコム『マイティ・ブーシュ』からの長い付き合い。エリザベス二世のジュビリーにパディントンが出た時のショート映像にも出ていて、パディントンがぶっ飛ばしたサンドイッチのクリームを被っています。
・ウィリーが最後にママから貰ったチョコレートを開けると「金のチケット」が入っている。
・あとやっぱり、『パディントン』のように「どろどろ、べたべた」が一つの鍵になっている感じがする。マーマレードやクリームを撒き散らしながらロンドンにやってきて、それをいかに維持するか(体の中身を取り去る剥製からいかに逃れるか)という話だったように、カルテルには下水道を駆使して戦って、最後は溶けたチョコレートが噴水になる。
・ポールキング作品にあるアナログ要素(パディントンの仕掛け絵本とか知育おもちゃにあるようなセンス)が、工場、発明というモチーフと非常に相性が良く、食べ合わせの良い二つだったんだな
・ところでこの映画はバートン版の方とは何の関係もないんだけど、一つ繋がりがあるところがあって、それがティモシー・シャラメが過去に『シザーハンズ』のエドワードの息子という設定で車のCMに出たことがあるということです。
 2年くらい前のスーパーボウルで流れたキャデラックのCMなんですが、ウィノナライダーがわざわざ金髪で母親になったキムを演じて、シャラメはエドガーという名前の高校生の息子でした。なかなかジョニーっぽい面影が出ていて良かったんたけど、まさか本当に同じ役を演じることになるとはね。という感慨もあったんですが、サタデーナイトライブのスケッチのこともあってどうも観ている間それがちらついてしまったのも確かでした。出ている映画はあまり観たことがないんだけどそれなりにいい印象を持っていたので、残念なことだなと思う。
・タイカ・ワイティティが作っているらしいウンパ・ルンパのアニメーションって一体どうなってるんですかね……?





 以下は延々とウンパ・ルンパの話です。

 私が1番気になっていたのはウンパ・ルンパの扱いを一体どうするかということだったんだけど、実際観てみると見た目以上に物語の上でかなりの補強がなされているな〜と思った。というか、こんなにちゃんと話に組み込まれるウンパ・ルンパは見たことがなくてびっくりしました。裏主人公じゃん。
 というのも、このキャラクター(たち)は原作刊行当初から映像化にかけて、どんな見た目をしているかというのが二転三転しているので、今回はどうなるのかが気になって仕方なかったんですね。


 刊行当初、ウンパ・ルンパたちは「白人が今まで訪れたことがないアフリカのジャングルから連れてこられた」「人懐こいブラック・ピグミーの一族」と描写され、批判を受けて「白い肌に茶金色の髪、薔薇色のほおをした小人のヒッピー」というふうに改稿されたという経緯がある。おまけに彼らはお金ではなくカカオ豆を給料として貰い、それに満足して働いている。
 なので、ワイルダー版の「オレンジ色の肌に緑色の髪」という風貌は、おそらく特定の人種を連想させないよう狙って作られたもの……なんだと思う。当時どう作られたかをよく調べたことがないので本当のところはわからないけど、多分そうなんだと思う。
 ケニア系インド人のディープ・ロイが一人で何パターンも演じたバートン版のウンパ・ルンパは、これを改悪だと批判する批評も少なくなかったらしい。

 という経緯を踏まえてみると、ポールキングのウンパ・ルンパの出し方は、予告編だけ見た状態では私はかなり手堅い方法を取ったんだなと思った。新しくウンパ・ルンパの姿を作るわけでもなく、有色人種の俳優を使うわけでも、低身長の俳優を使うわけでもなく、白人男性のヒューグラントを瓶に詰められるぐらい小さくして、ワイルダー版のトリビュート的に出している。
 あと、一人しかいないというところもすごく気になっていた。ウンパ・ルンパは個人名ではなく種族名で、原作ではルンパ・ランドには数千人のウンパ・ルンパたちが住んでいる。なんであのウンパ・ルンパだけがウィリーと同じ街にいるのか? あれ以外にもウンパ・ルンパたちは出てくるのか? なんらかの理由でルンパ・ランドから離れざるを得なくて、ウィリーのチョコレートを盗んで食べながら暮らしている「はぐれウンパ・ルンパ」なんじゃないか? それはちょっとパディントンみたいだな? なんてことを考えていました。

 ヒューグラントのウンパ・ルンパの1番大きな特徴は、ウィリーと非常に似た立場であるということ。借金(?)を抱えていて、魔法のトランクを持っていて、チョコレートが大好き。また、島を追い出された原因はウィリーにあるというのが重要なところで、二人はかなり対等。ここはとても意識されて作られていると思う。
 そして、ヒューグラントのウンパ・ルンパはイギリス英語を喋っていて、スーツを着ている(これちょっとどうなのかなと思ったんだけど、ルンパ・ランドと他のウンパ・ルンパに関する説明がほとんどないのでちょっと微妙。避けているのかもしれない)。カカオ豆の見張りをしている場面でもカラフルなセットアップみたいなものを着ている。ルンパ・ランドは海に浮かぶ南の島で、地上で見張りができるということは、原作やバートン版にあるような危険な天敵はいないのだと思われる。ウンパ・ルンパたちにも法があり、借りは一千倍にして返さなければならない結構厳しい社会で、ウィリーはそのおかげで命を救われる。
 ヒュグラのウンパ・ルンパがウィリーを助けたのはラストあとひと瓶が絶対に欲しいからで、ウィリー自体にはなんかそんなに興味なさそうに演じてるのがすごいいいなと思った。カカオ一千個の借りを律儀に返してそして達成しているあたり、この映画の中で1番約束事や契約に厳しくてドライなのはたぶんあのウンパ・ルンパだと思う。きっとあのあとあの人が橋渡しになって、工場にやってくるウンパ・ルンパが増えていくんでしょう。
 こういう話の上での補強の仕方が、『パディントン』で移民の子グマとイギリス人の関係を描いた監督のものだな〜と思った。
 そして、ルンパ・ランドから追い出される場面で映る他のウンパ・ルンパなんですが、どうも全員ヒューグラントのような気がしたんだけど誰か一人一人の顔まで見れた方いませんかね………? 「見た目がワイルダー版だってだけで全員ヒューグラントだったらどうしよう」って思ってたんだけどその可能性が出てきた でも台詞では「ウンパ・ルンパの平均身長より〜」みたいなことを言ってるので、少なくとも個々の身長に違いはあるみたいなんですよ。
 まあこの辺はたぶんポールキングがうまいことバートン版の要素を滲ませたんだと思うんですが、気になるな〜。
 
 コミコンで忙しくってインタビュー関連をチェックしていないので、各ポッドキャストをあらかた聞いたらもうちょっと色々考えたい。
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