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大怪獣ガメラのShinMakitaのレビュー・感想・評価

大怪獣ガメラ(1965年製作の映画)
3.0
北極…探査船〈ちどり丸〉を下りてエスキモーの集落にやってきた東大生物学教授・日高は、集落の長から伝説の石を託された。石には亀のイラストがあり、これは日高の仮説を強く裏付けるものだった。日高は以前より、北極の下に沈んだアトランティス島に特殊な生物がいたのではと考えていたのだ。日高はこれを手に〈ちどり丸〉に帰還しようとするが、その矢先、北極上空を通過した国籍不明の爆撃機が米軍戦闘機に撃墜されるという事件が発生、爆撃機が原爆を搭載していたため、〈ちどり丸〉の近くでキノコ雲が上がってしまう。そして裂けた氷塊の下から、巨大な亀が出現する。亀は60mの巨体を揺らしながら〈ちどり丸〉に接近、破壊してしまうが、その後、海の底へと消えてしまう。
この巨大亀こそ、エスキモーの伝説にあった〈ガメラ〉であった。だが世界が驚愕したのも束の間、日高が「ガメラは被曝している以上、長く生存できない」と持論を展開し、報道も下火になっていく。同じ頃、全世界的にUFOの目撃情報が相次ぎ、マスコミはそちらの方をこぞって書き立てるようになっていく。

そんなある日、襟裳岬に突如ガメラが出現。灯台を破壊し、上陸後は地熱発電所を目指して進行する。現地入りした日高は、自衛隊と協力し発電所の電力を利用し感電死を目論むが失敗。戦車・速射砲など通常兵器も全く効果なく、発電所は壊滅してしまう。電力やガソリンなど、熱エネルギーとなるものは全て吸収し、火炎を吐いては周囲を焼き尽くすガメラ。米軍の原爆も無効と考えられ、頼みの綱は自衛隊の特殊兵器〈冷凍爆弾〉だけだ。どんな物体をも凍らせることができるという代物だが、効力は10分しかない。北海道大学生物学教授・村瀬のアイデアで、この10分を使いガメラの足場を爆破する作戦を立てた日高。作戦は見事に成功し、ガメラはバランスを崩し地面にひっくり返ってしまった。亀は甲羅を下にしたら、二度と起き上がることはできない。あとは餓死を待つのみと安堵した日高と村瀬だが、その直後、2人は信じがたい光景を目撃することになる…


「大怪獣ガメラ」


以下、大怪獣ネタバレ。


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どうでもいいけど、俺アラスジを延々と書きすぎだな。


…さて、角川映画の旗艦劇場として君臨する角川シネマ有楽町では、三池さんの妖怪大戦争公開記念で「妖怪特撮映画祭」をやっております。正直妖怪には全く興味がないんだけど、たまたま時間が空いた昨日、ガメラ一作目が上映されるということで鑑賞することにしました。平成ガメラは大好物だけど、初期のガメラシリーズを観た記憶がないもんで、まあ話のネタになるかなぁと。

で、たまげたワケですよ。
この一作目、傑作です。決してチープな特撮を揶揄した皮肉じゃなくて、心の底から感動しました。

特撮だけにフォーカスしたら、確かに完璧とは言いがたいですよ。銀座のセットも、氷原でのちどり丸攻撃シーンも、安っぽさが目立ち、ミニチュアの尺も合ってないようにも感じちゃいます。でも、少ない予算と、何よりノウハウが乏しいなかでこのクオリティは大健闘ですよ。それを踏まえて、序盤の飛行機シーンを見ると、かなりの出来に感動できると思うんですよね。ミサイルが綺麗に水平に飛んでいくのも美しいですし。

怪獣映画を大人が楽しめるか否かは、怪獣退治アイデアのリアリティにかかってると思っております。本作のアイデアは2つ。冷凍爆弾とZ計画です。熱帯地方での戦闘を想定し自衛隊が極秘開発していた(また日本が国外で戦争する気だったのかい!というツッコミはやめておくが)という冷凍爆弾。既存兵器の転用というのは、突然現れた脅威に対して、実に理にかなってます。冷凍することでガメラは殺せないけど、ガメラをひっくり返してしまったら勝てる、と考えるのは当然のロジックです。しかしただの亀じゃないガメラは、甲羅を下にしたらある方法でピンチを脱します。現代の我々はガメラの特質を知ってるから驚かないけど、当時初見の観客は、日高同様にサプライズを食らったんじゃないかな。Z計画については、「米ソの科学技術の粋を結集した作戦」ということで「あー、はいはい出ました、ご都合主義的究極兵器」と思い込んでしまうんだけど、その内容は一切描かれないで、ラスト数分で初めて観客に提示されます。何も知らなかった俺は、きっと当時の人と同じくらい驚いたろうな。このZ計画の方が今となっては冷凍爆弾より現実的ですよ。本作公開の四年後ですよ、種子島宇宙センターができるのは。

とまあ、「ガメラ空を飛ぶ」「ガメラを火星に送る」という2つのサプライズ、見せ方が巧いのもさることながら、きちんとフェアに伏線を張ってるのが天晴れですよね。「ガメラ現る」のニュースが霞んでしまったUFO騒ぎ、あれも実はガメラだったというのはまだ判り易いけど、素晴らしいのはトシオ少年のパートですよ。トシオは亀を殺すのは反対だけど、お別れすることには納得している少年。それは、襟裳岬でチビを放すとこと築地でチビの帰る家を捨てられたとこで描かれます。ちゃんとガメラとさよならすることに自分なりに結論を出してるんですよ。これまで日高の邪魔をしていたトシオが、大島に上陸してから手のひら返しにZ計画を賞賛するのは、この伏線があるからなんだよね。とにかく、ラストのオチに膝を打って心から満足した作品と断言します。東宝は同年「怪獣大戦争」を発表して既に圧倒的にクオリティの差があったけども、俺はスピリットとアイデアと脚本力はガメラの方が上だと思いました。オススメ!
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