YukiSano

ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカットのYukiSanoのレビュー・感想・評価

3.9
DCの敗者復活篇。
家族の不幸で撮影途中で退陣してしまったザックスナイダーのリベンジムービー。

代わりにアベンジャーズの監督ジョス・ウェドンに本作を任せたワーナーのなりふり構わない態度が当時の混乱と焦燥が想像できる。結果、ジョス版は途中変更した部分がチグハグで駄作となった。しかも製作中のジョスによるハラスメントで現場の空気は酷かったようだ。そしてDCはスーサイドスクワッドなど失敗作続きで、歴史的成功を納めたマーベルを横目に恥辱極まりない状況に陥った。

ここまで聞くと、何故にここで本作を再撮影とCG全編を作り直してまで作りたかったのか、謎だった。

しかし、見て納得。
こんなに悔し涙を感じるヒーローものはない。この作品に懸けた俳優たちの悔しさはどれ程だったのか?マーベルに完全敗北し、バラバラ砕け散ったユニバースを元に戻そうと集まった俳優達とヒーロー達がメタ的に重なり、かなり熱い気持ちになった。

意外とジョス版と大幅な代わりのないストーリーラインなのが驚いたが、やはりシーンのトーンが整合性が取れているので見ていて違和感がない。4時間かけてキャラクター達が描かれているので少々雑でも内面は伝わってくる。またステッペンウルフという悪役にしっかりと、内面が描かれていて奥行きが出ていた。彼の上司に媚びへつらう姿はワーナー幹部の誰かなのか?と勘繰りたくなるくらい生々しかった。

正直、脚本の出来はマーベルには及ばない。しかし、ワンダーウーマンが華麗に舞う度に僕の涙腺は緩んだ。こんなに無条件でヒーローを体現してくれる女性キャラクターは他にいないと思う。そしてフラッシュが走る度にワクワクし、応援したくなる。サイボーグは今回、実質的な主役のようで最も内面が描かれていて、無名の俳優だからこそ感情移入ができた。アクアマンは単独主演作を見た後なので安心して見ることができた。バットマンの苦悩はベンアフレックの俳優としての苦悩そのままに見えて痛々しかった。スーパーマンはやっぱりまだヘンリーカヴィルに続けて欲しいと思うほどカリスマ性に溢れていた。ちゃんと魅力的なキャラが沢山いることを実感。結果として、他のヒーロー単独作品が公開されていたこともあり、今のタイミングで見た方がキャラが掘り下げられているので感情移入できたのだった。

スーパーマン復活の下りなど、ジョス版と同じグダグダ感があるが、それでも本物の監督がやると違和感なくハマる。

ただ最後のジョーカーが登場する再撮影追加シーンは不自然に長く、明らかなクリフハンガーとなっている。本作の続きはない、と言っている割には完全に続編への予告編となったものを追加撮影するだろうか?もしかしたらDCはフラッシュの新作でノーウェイホームのようなパラレルユニバースの融合を企んでいるらしいので、何かを仕掛けようと目論んでいるのかもしれない。

ザックはほんの一握りの希望を持たせてくれた。後は我々がこの真ジャスティスリーグを盛り上げていけば、続編が作られダークサイドとの戦いが観られるのかもしれない。そのためには瀕死のDCを応援するしかないだろう。

そして、いつかマーベルユニバースともシンクロし、権利関係という次元の壁を越えて共演が実現すると信じて応援し続けようと思う。そんなことは映画芸術の崩壊を招くかもしれないが、観てみたいものは仕方がない。死ぬまでに実現していただきたいので、永遠に応援し続ける所存です。
YukiSano

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