わたぼう

偶然と想像のわたぼうのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
5.0
東京フィルメックス2021にて。

大大傑作だった。濱口竜介作品で1、2を争うほど好き。(一番好きな『ハッピーアワー』に匹敵。)フィルメックスの会場でいち早く観れて、Q&Aも聞けて幸せだった。てか泣いた。

帰りのエスカレーターで「いい映画だったね」というお客さんの声が2回聞こえた。みんな感想は同じなんだな。

エリック・ロメールの編集の方から、ロメールがいかに短編制作を大切にしてたかを聞いたそうで、短編制作によって、長編と長編のリズムを作ることができ、短編で試したことを長編に生かすことができる。より自由度の高い、より親密な作り方で、どうしてやらないと?と言われたのがきっかけで、本作が制作されたと そうだ。実は7本あるシリーズのうちの3本で本作が構成されているという。

他の4本もいずれ見れるのかな? 楽しみ。

1話目の中島歩がいいお声。Q&Aにも登場し、いちいち喋り方がよくてファンになった。今後も濱口作品で見るのが楽しみ。

古川琴音も最初、ん?という感じはしたが、徐々に濱口演出に適合していき、なかなかファムファタル感を出していた。

ズームはホン・サンスかな?と思ったら、あのズームの合間に役者が移動していてそのためだったと聞いて面白かった!

玄里さんは個人的に馴染みのある方なので、濱口作品に出るたびに嬉しい。今回もよかった。

2話目はエロおもしろい。森郁月さんが素晴らしい。

3話目はなんでああいう設定なんだろう?とは思ったが、とてもいい話で、心に沁みる。自分に置き換えて、まさに想像したくなる。

1話も2話もそうだが、『偶然と想像』というタイトルが抜群にいい。

英語タイトルは「Wheel of Fortune and Fantasy」で、wheel(車輪)に関連して、本作の各話には、バス、タクシー、エスカレーターと、物語の転換点で乗り物が登場する。もともと乗り物が好きだという濱口監督は、「ひたすら人がしゃべっている作品だと、観客は大丈夫か?と気になることがあります。そういうときは乗り物に頼ると、たわいもない会話であっても、観客が聞いていられる、観ていられるのではないかと思います。乗り物によって意外な言葉や関係性が生まれることがあります」と説明。

↑とのこと。なるほど『ドライブ・マイ・カー』にも通ずるところがあると関心。

サブタイトルも1話目『魔法(よりもっと不確か)』2話目『扉は開けたままで』3話目『もう一度』と秀逸。

濱口監督はやっぱり脚本が神。ただ今でも最高なんだけど、悪くいうと、もしかすると脚本や演出に、作品が追いついてないかもしれないなと思った。もうすでに高いところにいるんだけど、カンヌでパルムドールを獲るには、もうひとつ何かが必要なのかもしれない。あるいはこの手法ではないのかもしれない。いや今でも大好きなんだけど。
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