とぅー

偶然と想像のとぅーのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
3.8
2022.01.03

「偶然と想像」がテーマだとしたら、私はそのテーマに沿わずにこの作品をただの会話劇として楽しんでしまったと思う。
というのも1番人気らしい3話『もう一度』だけ全然入り込めなかった。言わんとすることはわかるけど、だから何?って感じだったし、そもそも状況設定が強引過ぎるのと演技が胡散臭いせいで共感できないどころか、寒いとすら思ってしまった。
1話『魔法(よりもっと不確か)』のタクシー内の会話からは幻想的な一瞬にしか宿らない永遠の価値を感じ取れたし、オフィスでの掛け合いからは元カレの内的心情が露になる過程を見ることができた。
『Before Sunrise』と谷崎潤一郎『痴人の愛』を思い出した。
2話『扉は開けたままで』の教授の言葉は性的誘惑に弱い女の生き様を認めつつ、肯定させるほどの説得力(からくり)があった。エロそうでエロくないやり取りが上品のまま物語を完成させてくれる。と思った矢先、最後の約束でそれも裏切られたが、個人的には笑えた。
また、官能的な描写で読者を最後まで引き込むという手法がこの2話をもって実証されているのが皮肉だった。
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