ぽこすけどうだら

偶然と想像のぽこすけどうだらのネタバレレビュー・内容・結末

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

1話目
元カノとの対話で、初めて浮気の本当の原因を知らされ動揺したり、「私だってあなたを傷つけたことに傷ついたの」という告白に驚き、「理解しようとしたの?」との問いに「話は聞いてたよ」とトンチンカンなことを言う元カレ。

それでもラストの喫茶店のシーンで、誘いに乗らず、自分の意思で相手の手を握ったシーンは、自分でかけていた魔法というか呪いを解いていように思えた。飛び出した元カノを追いかけてしまっていたら、相手と理解しあうことはできなくなってたんだろうな。

2話目
簡単に自分を否定してくる悪意(=セフレの大学生)に対して、それでも受け入れてしまう弱さをもつ主婦が、大学教授と言葉を交わしていく過程で、彼女自身が抱える弱さを含めたある種の異物感を受け入れていく過程が本当によかった。

突然のバスでの再会のシーン。拒絶していたはずの名刺を渡してキスしたのは、悪意である彼そのものを、初めて自分の中にある悪意として飲み込んでやると言う気迫と凄みがあった。だからこそ、彼女はあんなに笑顔でバイバイしたのに一度も車内にいる彼に視線を向けなかったんだと思う。

3話目
「あなたは幸せ?」と言う問いに即答できなかったことから少しずつ話が面白くなっていった。穴の話で完全にお互いを理解しようと言うきっかけになっていったと思う。欠けた思い出を補完しようと互いに演技するシーンなんてもう最高だった。そこにフィクションはあるけど、すごくリアルだった。
赤の他人同士の勘違いだったのに、お互いを理解しようとしたからなのか、ラストシーンで抱き合うまでになる。

お互いをわかり合おうとしたり、理解しようとしたりすることの瞬間をすごく丁寧に描いている映画で本当に素晴らしかった。コロナ禍で話をすることそのものに飢えているけど、それって相手を理解しようとしてるの?って問いを投げられてるようで面白かった。