叡福寺清子

対峙の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
3.4
6年前のある日.一人の男子高生が,パイプ爆弾及び銃撃で自身の高校を襲撃,生徒複数名を殺傷の後,自殺するという事件を起こしました.そして今日,加害者少年の両親と一人の被害者の両親が面会することになりました.最初は互いを気遣う社交辞令的言葉が並びますが,言葉を重ねていくうちに・・・

人からは言葉が軽いと指摘されがちな三遊亭呼延灼です.こんばんわ.職業柄しょうがねぇんですがね.

で,本作.舞台の映画化か?と思わせるように一室4人の会話でほぼ構成されております.社交辞令はともかく,出てくる言葉一つ一つに感情という質量が荷重され,大変しんどい視聴になりました.私達夫婦(かれんさん大好き♡)は子供を持たないと決めておりますが,お子様をお持ちの方々には,より重みを感じる作品になったのではないでしょうか.
そう,今の時代誰でも加害者になる時代.折しも,昨今の本邦でも飲食店での(本人達にとっては)軽い悪戯がSNSで拡散,あっという間に全国規模のニュースになり,自宅まで特定,高校中退,被害にあった飲食店による損害請求,デジタルタトゥー,と取り返しのつかない事態に発展する案件が複数ございます.もちろん,殺人と比較することはできませんが,ですが加害者の両親にしてみれば,何故?と一生問い続ける事になるといった点では共通でございましょう.たとえ被害者の母親が赦すと言ってくれたとしても,です.もちろん,それは被害者のご両親とて同じこと.何故うちの子が死ななきゃいけなかったの?と永遠に問い続けることになるでしょう.赦しを与えたとしても.
そしてそれぞれの魂が救済されることを願うかのように,賛美歌の美しいメロディで本作は幕を閉じます.その余韻は,神様もたまにはえぇことするやんと思わせるに十分でございました.