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きみが死んだあとでのしょうたのレビュー・感想・評価

きみが死んだあとで(2021年製作の映画)
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「誰もが誰かの死んだ後を生きていきます」
長い上映の後、代島監督のメッセージが読み上げられた。その言葉は、政治的な死ということに限定されない、人の死と残された者について普遍的な意味をタイトルに含ませたことを感じさせた。実際ぼくは、このタイトルから、政治的な背景はなく自殺した学生時代の友人のことを連想しながら惹かれるものがあって観に行った。

1967年の羽田闘争で警官に撲殺された山﨑博昭・18歳。
強い印象を残すのは、母親が家計簿の余白に博昭さんの死の一報があってからの出来事を忘れまいと淡々とメモしていた筆跡。この母の芯の強さのようなものを感じる。
それから、博昭さんが死んで取材を受けた友人の一人が普段はクールなのに泣き出した、その時のことを話しながら思い出して泣いてしまう初老の元友人の姿。
前半は主に事件に至るまでの博昭さんを追い、後半は主に死後の政治・社会的な展開を追う。
後半では、内ゲバによる2名の死、また救援活動に取り組んだ物理学者と二人の息子の剱岳の遭難死も出てくる。家族が「死んだ後で」遺志を継ぐように活動を続ける妻(母)の強さ、冷静な語りが印象に残る。
日本社会に野の草のように綿々と宿る、市民的良心を鮮やかに観る者の心に浮かび上がらせてくれる映画。

この日、10月8日の博昭さんの命日で来場出来なかった監督がメッセージを上映会に託したのだった。こんな言葉もあった。
「山﨑博昭の死後、吉田茂の国葬があった。山﨑の死を社会に忘れさせてはいけない、と学生運動に取り組む友人たちは考えた。
今年、安倍元総理の国葬があったが、社会が赤木敏夫さんの死を忘れるようなことがあってはならない」と。
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