しょうた

夜明けのすべてのしょうたのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
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最近、映画を観ても面白いと思えないことが続いた。でも、この映画は観て良かった。
余白の多い映画だった。だから、観ながら映画の世界と一緒に深呼吸していたような気がする。

坂道の途中で、ほどけたスニーカーの紐を結び直す。そんな風に、病を抱えた人には、何度も靴紐がほどけてその都度結ぶ直すような毎日なのかもしれない。でもその代りに、見過ごしがちな地面とかあたりの景色がよく見えるのかもしれない。

人は人に支えられて生きているし、死んだ人にも支えられていることもあることが描かれていた。若者の話が中心だが、親世代やさまざまな立場の人が丁寧に描かれているのも良かった。

お仕事映画としても見応えがあり、中小零細企業の持つ底力、まだまだ社会を底辺で支えている魅力が伝わっても来た。

主演二人の自然な佇まい、話し方が、いかにも今どきの若者で見事だった。この二人は朝ドラで戦時中の恋人役もしていたので、今回も素というよりは演技の力で役をこなしていたのだと思う。

滲むような感触の映像も味わいがあり、これが16ミリフィルムで撮られたと新聞で読んだことを思い出した。映像というか、映画の作品世界が凛とした品格を湛えて息づいていた。
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