千年女優

ボーはおそれているの千年女優のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
2.5
深刻な不安障害を患ってセラピーを受ける中年男性で、犯罪が多発するスラムのアパートで様々な事柄に怯えながら暮らすボー。有名企業ワッサーマン社を経営する母親との再会も苛まれる妄想のためにままならない彼が、不意の事故でその母親が死亡したことを知らされて帰省へと旅立つも次々と障害に阻まれる様を描いた不条理ホラーです。

『ヘレディタリー』『ミッドサマー』と自身が抱くトラウマを寓話化した二作を立て続けに成功させたアリ・アスターがかつて手掛けた短編作品を膨らませて制作した長編映画第三弾で、過去最高額の予算でスター俳優ホアキン・フェニックス主演の物語を盛り立てるも絶賛続きだった批評に否の割合が増え、興行収入面でも陰りを見せました。

前二作も寓話化がインパクトはあっても本来表現したいものを弱めている感がありましたが、混乱の出産から次々住民トラブルに襲われる具体的な「やなこと」の畳みかけの序盤にグレードアップを期待させました。しかし結局は抽象化に頼るいつもの作風で、寓話の完成度も劣り、一時の奇行より恐ろしいはずの中核に至らず終いの一作です。
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