たく

茜色に焼かれるのたくのレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
3.5
母と子の成長物語に観終わってジーンと来たけど、良子の行動原理がよく分からなくて今ひとつ入り込めず。彼女自身が「本当の自分が分からない」って劇中で言うので、あえてそう描いてるんだと思った。石井監督自身の脚本もなんだか不自然で、日常会話で普通は言わないようなセリフを入れてくる邦画アルアルに観てて恥ずかしくなってしまう。
コロナ禍を全面に押し出してるのが印象的で、これからの映画は登場人物がみんなマスクしてる演出が増えるんだろうね。

自動車事故で夫を失ったシングルマザーが己の生き方を貫いてるようで実は何を考えてるのか分からないのが怖くて、冒頭の「田中良子は芝居が得意」のテロップで何か裏事情があって全部演技なんじゃないかとミスリードされた。池袋の自動車暴走事故をモデルにしたような加害者や夫の元バンドメンバーのセクハラ、学校の同級生など男がみんなクズとして描かれる中、息子の思春期の奮闘記や風俗店の店長が光ってた。
ターニングポイントの居酒屋で他席の誕生日のお祝いが黒澤明の「生きる」を連想。終盤でようやく自然な展開になってからの「終わり良ければ全て良し」みたいな締めくくりにはジーンと来た。

小野真千子はもっと自然な脚本で観てみたい。「君が世界の始まり」が印象的だった片山友希の不自然なセリフをカバーする演技力が凄くて、永瀬正敏が唯一自然な役で救われた。
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