たく

不死身ラヴァーズのたくのレビュー・感想・評価

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)
3.7
恋に一途な女性の全力疾走の生き様を描いてて、見上愛の弾ける魅力が全てと言って良いくらい輝いてた。原作コミックは全く知らず、「ちょっと思い出しただけ」の松井大悟監督という理由だけで鑑賞。松井監督は「君が君で君だ」「手」など、純粋なようでどこか歪んでる恋愛を題材にした作品が上手いように思う。りのの理想を投影する甲野を演じた佐藤寛太は、「正欲」でもイケメンなのにわだかまりを抱えた役で出演してたね。

冒頭で病床に伏せってる7歳の長谷部りのが登場し、命の灯が消えかけたところに甲野じゅんと名乗る男子に手を握られる。ここでりのが急に生気を取り戻して病室を抜け出し、高校生に成長した姿に繋がる場面転換が非現実的。これはもしかして7歳の少女が死の間際に成長した自分が恋愛する姿を一瞬夢見た走馬灯的な幻想かと思っちゃった。

りのが幼少期に出会った甲野じゅんを追い求め、彼の外見をまとった男子に出会うたびに真っ直ぐな恋心をぶつけていくんだけど、相手に振り向かれた瞬間にその相手が消えてしまうという謎展開。このファンタジー要素に戸惑ったところに、寝るとその一日の記憶を失うという5人目?の甲野じゅんが「50回目のファーストキス」そのまんまの展開。このジャンルは最近だと「今夜、世界からこの恋が消えても」もあって、りの自身が「映画で良くある話」だと相対化してたのがクスッと来た。

りのがじゅんとのデートにギターを持ってきて駅の階段でいきなり歌い出すのがイタいんだけど、その弾き語りの迫力に圧倒された。見上愛はミュージシャンではないようなので、本作のために相当練習したんじゃないかな。序盤のファンタジー要素が回収される終盤で、映画が普遍的な人間ドラマに着地するのが出来過ぎな感じ。りのの願望だった赤い屋根の家で終わる幕切れに、やっぱり7歳の少女の幻想だったんじゃないかという疑念が拭えなかった。
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