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茜色に焼かれるのbluetokyoのレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
2.8
石井裕也監督の作品ということで期待して見に行った(いまとなってけっこう前だけど)。といっても、川の底とあぜ道しか見ていないが。石井裕也監督作品の流れというと、主役がぼーっとしている。なにかのきっかけで覚醒。そのあとの気持ちいい疾走。茜色はどうなのだろう。
こういうこと書きたくないが、尾野真千子さんは完全にミスキャストだったようだ。主演は、たとえば片山友希の方がぜんぜんよかった。
尾野真千子さんの演じる田中良子は、最近のどっかで聞いたような上級国民の暴走車で夫を亡くしている。世の中にうまく適合できずに搾取されバカにされる底辺の代表。だが、それだけではない。加害者である、上級国民の葬式に平気で行ったり、賠償金はいらないと言って受け取りを拒否したりする。どういう意味なのだろう。
田中良子は自分を底辺と思っていないからだ。踏みにじられていると思っていないのだ。むしろ、良くしてもらっているとさえ思い、感謝しているぐらいなのだ。それが、習慣のように出てくる台詞、「がんばりましょう」なのである。虐げられている人間がいくらがんばっても意味がないことに気付いていないのだ。
尾野真千子さんの言う「がんばりましょ!」が、完全に浮いてしまっているのは、この台詞の意味するところを彼女が理解しないまま、演技に入ってしまったからだ。たしか、撮影期間が二週間しかなかったと聞いた。もう修正不可能だったのだろう。
作品の言わんとしているのは、被害者は、もっと、怒れ! ということ。加害者の葬式に殴り込みをかけたっていいし、悪いやつが破産してしまうぐらいに賠償金を取ってもいいのだ。みんな平等だと思って、にこにこしているだけなら、たちまち、すべてを毟り取られ、バカにされるだけなのだ。尾野真千子さんの「がんばりましょう」は、なんだか、悟りを開いた、もののわかった、上から目線を感じてしまうのだ。社会の理不尽をわかっていないからこその悲しい言葉であるはずなのだが、それが感じられなかった。
いじめっ子三人組の放火は、どう考えても犯罪レベルのような気がするが。
ピンサロ嬢役の片山友希さん、ピンサロ支配人役の永瀬正敏さん、弁護士役の嶋田久作さんはよかった。
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