ジョン

茜色に焼かれるのジョンのネタバレレビュー・内容・結末

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
2.6

このレビューはネタバレを含みます

結構評価が高くて、満を持しての鑑賞やったけど、うーーーん………。お粗末な部分が多くてモヤモヤする。

良かった点として役者の演技が挙げられる。主演の尾野真千子とケイを演じる片山友希さんの魂の演技にとても心を動かされた。脇役の方々の胸糞演技も見事。特に夫の友人の元バンドマンの人が凄かった。子供の前でお金の話とかセクハラ発言するの最低すぎるし迫るのもクズすぎる。弁護士も花屋の店長も熊木くんもケイの父親も皆めちゃくちゃ腹立つ。それだけ役者陣素晴らしかった。
熊木くんを皆でボコボコにするのもまあ良かった。唯一のカタルシスやし、ケイが自分の恨みを晴らすためではなく、あくまで良子のために怒ってるのが泣けた。あいつだけ裁かれるのはあまり納得できない気もするけど、巨悪が裁かれずあの一番しょうもない男に罰が下るのはある意味リアルなのかも。


でもでも、ダメな部分が多い。大きく2つ。

まず、男性の描き方。"男性=悪"的な表現が最近の映画に多いくてげんなりしてるけど、本作はそれが特に顕著。男はほとんどクズやし、クズじゃないのが息子とヤクザ風俗店店長だけってどうなんかな?
しかも描写が一面的で更にたちが悪い。例えば花屋の店長。良子を叱りクビにしたのは上からの圧力があったのが一因のはずで良心もあるはずなのに、そこが後半全く描かれず、挙げ句の果てにはセクハラキャラに成り下がるという始末。風俗に来る客は皆横柄やし、女性の嫌なヤツはほとんど登場しない。担任が女の先生とかならもう少しバランスとれたはずやと思うけどな。

もう一つが時事問題の取り入れ方。冒頭の事故は池袋暴走事故が元ネタなんやろうけど、吉田恵輔監督の『空白』なんかに比べると加害者側の態度とか周囲の反応の描写がやや軽薄な感じがする。
コロナ禍描写も首を傾げる。マスク姿に溢れた街や飲食店や学校での感染症対策をここまで映画で描いた点は評価すべきやけど、中途半端なんだな、これが。良子が街中や人前であまりマスクをつけないし、かと思えばいじめっ子は放火するときちゃんとマスクつけてるし。コロナ禍で苦しむ人への映画やと思うし、細かい指摘ではあるけど、144分もあるのだからもう少し丁寧に描いてくれても良かったのでは、と思う。

他にも細かい不満が色々。イジメ問題が有耶無耶になってるのとか、わざわざジュンペイ君を天才少年にする必然性とか、良子が自転車パクるのとか(一応返したけど)。

とにかく不満が止まらない。弱者に寄り添うならもっと丁寧に寄り添ってくれ。
ジョン

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