久々感傷
映画的な、あまりに映画的な一本
まずはあらすじから
ーーーあらすじーーー
■盛大な披露宴、受付付近にむらがる記者たち。公団の課長補佐が汚職関与の疑惑で逮捕
され、土地開発公団の副総裁、岩淵(森雅之)の娘・佳子(香川京子)と、岩淵の秘書・西(三船敏郎)の結婚式は騒然した雰囲気であった。
花嫁の佳子は足が不自由で母が手を引いて入場する。
公団管理部長の守山(志村喬)の乾杯、佳子の兄辰夫(三橋達也)は妹を幸せにしなければ西、お前を殺すという激情あふれる挨拶。ケーキ入刀でホテルの用意したものととは別にケーキの差し入れが。記者たちがざわつく、、
公団のビルをかたどったケーキの7階に赤いバラの花が刺さっている。それは5年前、
公団の課長補佐・古谷が飛び降り自殺した窓だった。
■公団と建設会社の汚職については検察が公団の課長補佐・和田(藤原釜足)を取り調べるも黙秘。
和田は自殺しようと火山の火口に向かうが、それを阻止したのは西であった。
西は和田を車に乗せる。なぜ副総裁の婿であるあなたが、、、と怪訝に思う和田に西は公団汚職の裏側を説明する。。
和田本人の通夜でテープレコーダーで隠し取った、ダンスクラブでの和田の上司の守山と白井の会話。
守山と白井は和田の自殺に安堵し嘲笑っていた。
西は彼らに復讐を企んでいることを語り、和田を仲間に引き入れる。
■ある日、白井(西村晃)が公団の金庫をあけると、現金の代わりに公団のビルの写真がはいっており、岩淵と守山に説明するが、金を着服したと疑われてしまう。
そして深夜に憔悴しての帰宅途中、白井は暗がりに和田の姿を見る。白井は神経衰弱に陥っており、
■岩淵と守山は汚職の件がばれることを恐れ殺し屋に襲わせるがギリギリ西が救った。
西は白井を深夜の公団ビルの7階に連れて行き、5年前にここから飛び降りて自殺した古谷が自分の父親だと明かし、白井を窓から突き落とし殺そうとする。恐怖のため白井は発狂する。
■西は仲間の板倉(加藤武)と戸籍の交換をし、西という名前で副総裁に近づいたのである。
守山は一連の出来事が古谷に関係しているとにらみ、古谷の身元を調査する。子はなく未亡人一人のはずであるが未亡人にみせってもらった古谷の葬儀の写真に離れて映る西の姿。古谷の結婚前につくった私生児が西だったのだ。
守山は西の策略だと知り、すぐに岩淵に連絡を入れる。そのやりとりを聞いていた辰夫は妹を復讐のダシにした西が許せず帰宅した西を銃で撃つが西は逃げた。
■西と板倉は廃墟に守山を拉致する。西はこの後監禁や結婚詐欺の件を自首するつもりであった。警察につかまることで身の安全を確保した上で汚職の件を暴露する作戦。
しかし西は佳子を愛してしまっていた。和田が気を回し佳子を連れてきてその日初めて佳子を抱擁する。
■佳子は自宅に帰り、西の居所を聞き出そうとするが口を割らない。そこで辰夫が銃で西を殺しにいく、それを止めなければと言いくるめ居場所を聞き出す。
佳子が兄の辰夫と廃墟へ再び来て見ると、途中で自動車事故を見る。廃墟で板倉がひとり嗚咽、西が車の事故に見せかけて殺されたのだった。
■辰夫は、ショックで廃人のようになった
佳子を抱きかかえて岩淵のオフィスに。あなたとは二度と合わない!と告げて去る、おいかける岩淵だが、その時電話が鳴る。
謎の人物から電話で、一時外遊でもして、ほとぼりが冷めるのを待てと指示された岩淵は、電話の向こうの人物に向かって深々と頭を下げるのであった
ーーーあらすじおわりーーー
🎥🎥🎥
★冒頭の披露宴のシーンは素晴らしいね、豪華な式を祝う音楽の響く中で新聞記者が受付に群がり、汚職容疑の逮捕の件が会話の中から読み取れる複雑な背景をうまく構成した絵で説明している
顔、顔、顔の連続、公団上層部の妙にピリピリした表情、無表情の西と佳子、一人でやけ酒気味の辰夫、場違いにネタを嗅ぎまわる新聞記者たち、みんな腹の中は何考えてるのかわからない、誰が敵で誰が味方なのか、、、
本作を初めてみる人は人間関係の把握が難しいと思うけども、なにやら不穏な雰囲気は見事に伝わる素晴らしいオープニング
★西が和田の通夜に本人を連れて車の中から見てる場面。ここも坊さんの読経にかぶせて再生されたテープからは、ダンスホールでのポルカ風の曲(小津っぽい)をバックに守山と白井の会話。
通夜にダンス曲という真逆の音楽の使い方が異様な緊張感を生む。
★ストーリーは官僚の汚職問題にうまいことモンテクリスト伯要素をミックスしたもので三船敏郎はクールな復讐の鬼という新境地を演じている。
西という人物は決して悪い奴に対する良い奴というわけではない。敵に対する復讐を私刑という形で実行するのであり和田から見ても明らかにやり過ぎだ。
この西の生まれ変わりが『天国と地獄』のあの犯人のような気もしてくる。痛快とは程遠い物語だ、、、、
★香川京子はいつもながら美しいが黒澤映画では狂女役が多いのはなんでだろうか。
★息子と娘を追いかけるよりも黒幕との電話を選んだ岩淵。黒電話に深々と頭を下げる岩淵は一時的には逃げ切れたようにみえるがあのやり過ぎな頭の下げ方をみると、ああこいつも殺されちゃうかもねと思ってしまう。
痛快とは程遠い物語だけども、人間存在の深くて嫌なところをみてかえって妙にスッキリした後味が残った