真一

遠地/本当に遠い所の真一のレビュー・感想・評価

遠地/本当に遠い所(2020年製作の映画)
4.0
 異性愛者が圧倒的多数を占める人間社会。その中で、同性愛者がいかに苦しみもがいているかを、抑えた描写と演技を通じて静かに語りかけてくる良作です。

 舞台は韓国。中年男性のジヌは人目を避けるように、人里離れた山間部に暮らしている。見ず知らずの農家に身を寄せ、酪農の手伝いをしているのだ。寡黙で仕事熱心なジルは、農家の主人からは信頼され、主人の娘からは恋心を抱かれていた。

 そんなジヌの元に、若い細身の男性ヒョンミンが訪ねてくる。農家の一族から「どういう関係?」と聞かれ「大学時代の仲間」と曖昧に答えるジヌ。だが、農家一家は「友だちにしては、何かが違う」と直感する。それは、悲劇の始まりだったー。

 ※以下、ネタバレを含みます。

 重たい気分になる作品です。農家の親父さんも、アラサーとおぼしき娘さんも、みんな善人なんだけど、真実を知ると、目の色に出てしまうんですよ。そして、そのチラチラっとした視線にジヌは気付き、傷付く。

 さらに滅入るのが、ジヌとヒョンミンの喧嘩そして別れだ。差別的な村人たちに憤り、立ち向かおうとするジヌ。「差別はなくならないのだから、まずは現実を受け入れて周囲とうまくやっていこう」と訴えるヒョンミン。異性愛者たち(マジョリティー)が醸し出す差別的なムードに押し潰され、破局に追い込まれる様子を、本作品はのどかな自然風景を交えつつ、淡々と描いていきます。

 自分には、差別的な言葉でゲイの友人を深く傷付けたことがある。本作品をみて、その時の友人の悲しい顔を思い出した。いま思えば、鬼畜の所業だった。間違いない。私は、ジヌに殴り飛ばされる側の人間だ。

 力作だけど、内容が辛すぎます。
真一

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