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ペッピーノの百歩のbirichinaのレビュー・感想・評価

ペッピーノの百歩(2000年製作の映画)
4.0
以前観たときは重い作品という印象しかなかったが、シチリアのマフィアについて少し知ってから見直したら非常に面白かったし、意義ある作品だということが分かった。

シチリアのマフィア「コザ ノストラ」には厳しい掟がある。中でもオメルタ(組織について沈黙を守る)という掟は絶対だ。
主人公のペッピーノは集会やデモ、ラジオのDJでマフィアやボスのドン ターノの悪行を暴いているが、ペッピーノの父親はかつて店を持つのにドン ターノの世話になっていて、マフィアファミリーの端くれなのだ。だから、ペッピーノの行動は世間では勇敢と讃えられているけれど、マフィア側から見ると殺されて当然。
そのことを知って観ると、父親が単にボスに迎合したり自己保身に回っている情けない男なのではなく、息子や家族の命を守ろうと思い悩んでいることがよく描かれていると思った。

「ゴッドファザー」の頃まではマフィアをヒーロー的に描く作品が多かったが、1980年代にコザ ノストラの内情が逮捕されたメンバーから明らかにされ、この作品辺りからマフィアの負の側面が描かれるようになったそうだ。監督の勇気に敬意を表したい。

なお、ペッピーノ兄弟がボスを「ターノ叔父さん」、車に爆弾を仕掛けられ殺された別のボスも〇〇叔父さんと呼んでいるが、マフィアファミリーの一員になると、血縁関係がなくても叔父と呼ぶとのこと。そういうことを知らないと、観ていて人間関係をつかむのが難しい。
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