うなたま

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のうなたまのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.7
全くノーマークだったのですがあまりに評判がよいので今年の映画納めに行ってきました。
昭和31年という時代設定、敗戦から高度経済成長期に差し掛かるくらいのころでしょうか。
戦争で生き残ったことへの後ろめたさを抱えてる主人公というのは「ゴジラ -1.0」と重なるところはあるけれど、水木はそれを強烈な生への執着と自分たちを利用した世の中への復讐するかのように野心を抱えて、龍賀一族が治める哭倉村に向かい、亡くなった当主の遺言を聞く立会人になります。
このあたりは横溝正史の小説に出てきそうな流れ。
実際そのあと一族が次々と悲惨な謎の死を遂げていくところは完全に「犬神家の一族」
因習の残る村とそこに捕らわれた若い娘。探偵もどきの部外者。そして謎の幽霊族と呼ばれるのちの鬼太郎の父となるゲゲ郎が登場。
水木とゲゲ郎で龍賀一族の謎を暴いていくというバディものでもある。
ゲゲ郎は人間たちに狩られてしまった幽霊族の生き残りで最後の二人になってしまった妻を探してるうちに哭倉村にたどり着く。
陰惨な場面も多いのですが、水木の戦線でのトラウマ、欲に囚われた醜悪な龍賀時貞、ゲゲ郎の一途な思いとわかりやすい(いい意味で)設定を踏襲し展開もスピーディーでどんどん引き込まれていきます。
ぞっとするほど美しく咲いた桜の樹の根元に囚われたゲゲ郎の妻がいるという耽美性もアニメならではの美しさ。
夫婦愛と戦争のトラウマを抱えた帰還兵が新しい命の誕生を見届けるという決着が見事でした。
見てよかったです。
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