このレビューはネタバレを含みます
概ね下馬評通りの、気合が入った一本です。
鬼太郎の誕生、即ち「墓場鬼太郎」第一話へと繋ぐ前日譚です。
墓場から生まれた鬼太郎の誕生そのものが、かけがえのない歴史的奇跡であったことを我々に説き直してくれます。
横溝正史よろしく、奇々怪々な血みどろの田舎一代家督争奪戦&主人公水木のノワール譚です。
目も当てられないほどに、一方で未だ拭いきれないという課題も全然残っている、人類有史由来の汚点。
脈々と受け継がれてきているニンゲンそのもののが持つ残酷性が大本命です。
むしろ清々しいほどに、悪の親玉が極悪非道極まりないので、とてつもない脱力で絶望の淵へと突き落とされます。
今の時代にここまで思い切って風刺アニメを作ってくれたことに感謝しかありません。
ただ全体のテンポ感が若干速くてちょっと消化不良です。
もっとじっくり、どっしりやってくれた方がテイストとしては相性良いはずなのに。
作劇上、多くて3つくらいの話が同時進行することもありますからもっと丁寧にやらないと、そんなにあっさりいかれるととても勿体無いと思ってしまう。
「犬神家」ほどのどっしり、びっくり、ひっぱりが出ていなくてものすごく残念。。
私は所謂マスにハマるような映画好きではないのでしょうね、こうした作品の規模感に逆らってまで尺を短くするという、興行的戦略を目の当たりにすると心の底からウンザリしてしまいます(同じ¥2,000なら長い時間楽しめる方が良いに決まってるじゃないか、いやそうに違いない!)。
でも良かった。結局ラスト泣いたし、相手の思惑通りだったりして悔しいな。