のぼせギュウマン

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎ののぼせギュウマンのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.0
ストーリーは、ある製薬会社が開発した薬「M」の秘密を追い、血液銀行で勤める「水木」が社長のいる「龍賀一族」の屋敷に潜入する。そこに、行方不明の妻を探す男「ゲゲ郎」と出会う。
最初は、お互いを怪しむ。が、薬の秘密と妻の行方、それぞれの謎が繋がることが分かると、二人は、協力的な関係となる。しかし、二つの真相が明かされる時、悲劇的な結末が訪れる。

映倫は、PG12としているが、その通り。目ん玉を狙った殺人シーンが多く、血だらけのシーンもあった。犯人の行動や黒幕の動機も、残忍なものだったので、個人的には、「R15では?」と思った。

でも、「舞台が終戦後」という設定を知ると、「戦争が人を変えてしまった」といった戦争の恐ろしさを感じ取った。前言撤回して、これは、少女少年も観るべき作品だ。もちろん、大人からの助言も入れて。


一族の謎を追った「水木」と「ゲゲ郎」の物語は、原作読者の私でも、予測不能な展開の連続で、飽きずに観れた。
後半は、残虐な展開が続くが、ホラーだけでなく、涙無しでは観終われない物語だ。
個人的には、最後のほうで、ゲゲ郎とその妻が再会するシーンは、感動した。そこで話す二人の会話は、どこにでもいそうなおしどり夫婦と変わらない。そういう一般人感があるからこそ、親近感を感じやすくて、エンドロールでは、涙が流れた。短い間だけど、一緒に夫婦の時間を過ごせたんだって。




【⇓ここからがネタバレ】












個人的には、エンドロールまで、「こんなんで、どう鬼太郎が誕生するの?」と、ゲゲ郎の妻は、瀕死状態だし、ゲゲ郎自体も最強の妖怪を倒しに身を捧げるし。原作にはないオリジナルな結末を期待した。しかし、肝心な「鬼太郎誕生の瞬間」には触れず、現代パートへ。

「もしや、有名な話だから、端折られた?」

と思いきや、エンドロールの中で明かされる。おそらく、原作未読者には、無音で、訳の分からないアニメーションだったかもしれない。あれは、漫画「墓場鬼太郎」の初回を描いたシーンだ。この中には、「こんな化け物の子を生かす訳にはいかない」と、墓場から出てきた赤ん坊を、水木が殺そうとする場面がある。その時に手が止まる水木が、原作漫画よりも感涙するシーンだ。

けど、考えてみると、私は、あの一族で、最も可哀想な人は、少年の母親だと思う。見たところ、旦那とは政略結婚みたいだし、姉には使用人のように扱われる。挙句の果てに、旦那も姉の言いなりで気に入られていて、心の拠り所がいない。子供に当たる場面があるから、悪人のように捉えられがちだけど、彼女は、殺されるだけで終わってほしくなかった。

なかなかなサイコホラーにしては、心打たれる映画だった。