つづり

Firebird ファイアバードのつづりのネタバレレビュー・内容・結末

Firebird ファイアバード(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「実話を基にしている」「主人公のモデル人物が書いた自伝小説が原作にある」というところがミソだなあと思いました。

主人公セルゲイの友人であり、大尉の妻となったルイーザが言った通り、ローマン大尉は「セルゲイのために空軍も家族も捨てる」という選択はしなかった。翻ってみると、セルゲイが空軍在籍中も二人の関係が元で自分の身が危うくなる事態が起きるとその度にセルゲイを自分から遠ざけるんですよね(セルゲイのため、でもありますが)。
その割にセルゲイが人目を盗んで会いに行くと、特に逡巡とかもせずにすぐにキスし始めちゃう。それでもってまた同性愛疑惑が持ち上がると「私たちには何もなかった!」とか言い出す。

目先の快楽に弱いけど保身には熱心な男にしか見えませんでした。大尉の心の機微とかが分かればもう少し納得できたのかもしれません。

あと、大尉とセルゲイを追い詰める悪役的立ち位置の少佐はなんであんなに絶対大尉殺すマンだったんだろう。すごい徹底マークの粘着ぶりだったので、大尉と昔なにか因縁があってその復讐に…とかなのかと思ったら、ただただ職務に熱心なKGBおじさんだったみたいですね。プラス、ホモフォビア的感情もあったのかな。

大尉がアフガンで戦死したことを知ったセルゲイが、ルイーザに会いに行ったのは何しに行ったんだろう。まだ自分たちの関係がルイーザにバレてるとは知らなくて、単に友人として慰めに行ったんでしょうか。そうだとしても、ルイーザが烈火の如く怒ってセルゲイを詰り始めたところで「君たちの愛と同じように僕たちの愛も本物だった!」みたいな事を言い返さなくてもいいんじゃないかな。火に油注ぐだけだって!正妻ヅラしちゃダメだって!って観ててソワソワしました。

大尉がアフガン行きを決めたのも、セルゲイは自分の元を去ってしまったし、ルイーザにはセルゲイとのことがバレて修羅場だし、もう八方塞がりになって全ての責任から逃れるために死地と分かってて受諾した、緩慢な自殺だなと思いました。最後の最後まで保身じゃないか!

この映画が基にした実話からどの程度脚色を加えているのかは分からないですが、もうちょっと劇映画として登場人物たちの行動原理が分かるように脚色されていたら、私の感想はまた違ったものになったと思います。

あと気になるのが、作中の字幕では大尉は「ローマン」と呼ばれていたのに、映画公式サイトでは「ロマン」表記になってて、統一してくれよ!と思いました。

セルゲイと大尉はめちゃくちゃかっこよかったです。筋肉もすごかった。そこで星3.5です。
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