ルークシュポール

Firebird ファイアバードのルークシュポールのネタバレレビュー・内容・結末

Firebird ファイアバード(2021年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

途中まではすごく良かった。(海が綺麗、ファッション、非常事態で生還してからのラブシーンなど)
タンス?に隠れたセルゲイが棺に入っているようにも見えたので、最初は彼が死ぬのかとも思った。自叙伝が原作じゃなかったっけ?と
セルゲイが演劇学校に入り、演技の訓練をしたり劇のセリフを読むところも良かった

だが結婚式からずっとローマンに゙腹が立った
逮捕の危機にさらされているのはわかるが、それでもあまりにもルイーザにもセルゲイにも不誠実ではないだろうか 
不倫だからというより、
・何も知らないルイーザを騙した
・セルゲイとルイーザの友情も踏みにじった
から腹立つ
 
セルゲイも(そのことは分かっているのなら)再々会時に振り切って、ソチに行くべきではなかったと思うが、でも振られ方が振られ方だし当時相手を見つけるのも大変だろうから同情できなくもない
「嘘を付く者…」の朗読のくだりもあったから、あのまま別れるのかと思ってたが

男女間の社会的不均衡のおかげで一番ルイーザに同情せざるを得ない 結局女性に苦しみが押し付けられるのかと ルイーザは医学校へ行く夢(あれだけ試験勉強頑張ってたのに!)も一度取り上げられた上「良妻賢母」に押し込められ、それしかよすががなくなってしまったし。
これが男女逆(女性Aが女性Bと恋に落ちるものの彼女の友人男性Cと結婚。しかしBと再会し、AとBは同棲)だと、まだここまで胸糞悪くは感じなかった気がするが、これは私が男性嫌悪に陥りかけているということなのだろうか…。(この場合も「男らしさの押し付け」など別の問題が生じるだろうが)

ローマンは自分の欲望を満たしつつあくまでマジョリティ側に留まっていたかったのだろうな
セルゲイの愛もルイーザの愛も、ローマンには値しなかったのではないかと感じた。
本当にセルゲイを愛していたのか?彼もまた欲望のはけ口にすぎないのではないか?とすら思ってしまった 最後の手紙があるから本人は愛と思っていたんだろうが…
それでも、愛の感情は彼を愛した彼らにとってかけがえのないものなのだろう。

ボロクソにけなしたものの、とはいえ自分がローマンの立場に置かれたら、同じことをやってしまわない保証はどこにもない。彼がああなったのはKGBの捜査がきっかけだろうし
最後のメッセージ(一度は廃止されたが、近年のロシアで同性愛が再び犯罪化された)を踏まえると、ルイーザの悲惨な境遇も「当事者だけでなく、他の弱い立場の人々も傷つけることになる」というメッセージとして意図的に作られたんだろうな
追記: 監督のインタビューによると、「原作ではルイーザがネガティブな人物として描かれたが、悲劇の原因は彼女個人ではなく時代のせいだと思ったので描写を変更し、誠実に描こうとした」らしく、これで腑に落ちた。 
同性愛嫌悪とホモソーシャルが蔓延する社会は生きづらいということを改めて感じた。日本だって人のこと言えないかもしれないが、陳腐な言い方になるが少しでも良い方向に向けなければと思う。これしか言い方が見つからない。


ロシア革命初期に一度同性愛が非犯罪化されたと聞いたが、いつ復活したんだろう

セルゲイ役が若い頃のアンジェイ・セヴェリンに似てない…?特に顎と唇と口角上げたときの表情
演劇学校入ってからは髪型も相まって時々LRFのロベスピエールに見えた

結婚式のセルゲイのスーツで就任会見時の新庄監督を思い出して、深刻な場面なのに笑いそうになった