Violet

ノーカントリーのVioletのネタバレレビュー・内容・結末

ノーカントリー(2007年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

No Country for Old Men
時の流れと共に変容していくこの世界。
少しずつその変化についていけなくなるような感覚はなんとなくではあるがわたしも体感したことがあると思っている。
その変化とは「殺人」の在り方までもを巻き込んでいくのだ。
変わってしまうことは誰にも止められないし歳をとっていくということはその変化の波から弾き出されることでもある。
そんな救いようのない事実を突きつけられたような作品。
(これ邦題がノーカントリーになっているけど、for Old Menをなぜ抜いてしまったの...?意味が全然違ってきちゃうと思うんだけど...わたしにはその意図がわからない...)

まさに多くを語らない映画。
見る者を悩ませ、そして考えさせる。
様々な捉え方ができて、観賞後に様々な考察ができる本作は間違いなく優れた作品と言える。
脚本や見せ方も面白いし(特にMossに焦点を合わせて物語が進んでいたのに後半に差し掛かり急にMossが殺されているシーンが現れたのは驚かされた!まさに裏切られたような感覚!)、キャストも素晴らしい。Chigurhを演じたJavier Bardemはもう...!こいつなんかおかしいぞっていう狂気と、でもどこか抜けていたり身体能力がそこまで高くなかったりという私たちの意表をつくような要素も有していてそのアンバランスさが絶妙...!

ただわたしはですね、Mossに叫びたいわけですよ。あんたはバカかー!!!
いやもちろん人をなんの理由もなく殺めるChigurhが最も悪であるということは理解しているのですが、Mossの金に目が眩んだ気狂いじみた考えのせいで関係のない人たちが亡くなってしまったことが許せない!😠娘のことを思えばお金は諦めるべきでしょう!命を狙われてるのになんでメキシカン女性とお酒飲もうと思ったのよ!全く関係ないこの女性までChigurhの餌食になってしまってかわいそうだったー!😫😫 Chigurhが結局逮捕されずに逃げ果せたのも怖すぎる...まあこの終わり方がすごい余韻と恐怖を残していたからこそ数日間この作品が頭から離れなかったんだろうけれど。

▼Bellが見たふたつの夢
以下のサイトでわかりやすく解説されていてとても参考になりました〜!🙌
https://luckynow.pics/no-country/#i-3

(以下は自分のためのまとめです)

夢①「どこかの町で親父に金をもらい、それを無くした。」

夢の中で親父にもらった金とは、祖父から父へ、そして父から自分へ、親子三代に渡って受け継いできた“正義”を暗喩している。しかし、ベルの心は折れ、保安官を辞めることで、受け継がれた意思は失われてしまう。よって夢の中でも金を無くしてしまった。
ベルがこの夢を見たのは、リタイアすることに後ろめたさを感じたからだと思われる。それを表すのが叔父との会話の中のベルの台詞「俺が神でも、俺を見放す」である。

夢②「俺は馬に乗り夜中に山を越えていた。山道を通って行くんだが、寒くて地面には雪が積もっていて、親父は俺を追い抜き何も言わず先に行った。体に毛布を巻き付け、うなだれて進んで行く。親父は手に火を持っていた。昔のように牛の角に火を入れて。中の火が透けた角は月のような色だった。夢の中で俺は知ってた。親父が先に行き、闇と寒さの中どこかで火を焚いていると。俺が行く先に親父がいると。」

ここで語られる雪が積もった夜中の山道と、その道を先に行く父という存在から、これは親子が辿った保安官としての険しい人生を表している。父が何も言わず先に行ったのは、ベルが父親の背中を見て育ったということだろう。しかし、ベルが尊敬する父親もその道をうなだれて進んで行くことから、父にとってもまた険しい道のりだった。

そして、中の火が透けた角は月のような色だったという表現からは、暖かさを感じさせる良いイメージしかない。ベルが行く先がどこであっても父は火を焚いてそこにいる。これは1つめの夢の答えにもなっていて、保安官を辞めたベルを父は責めないだろうことを思わせた。
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