タマル

ノーカントリーのタマルのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
2.9
圧搾空気のあの武器、バリかっこええすわ。下さい。

以下、レビュー。


むずかしかったです。
というか、1980年代のアメリカに対する知識が0なので理解する糸口すら掴めませんでした。緊張感を楽しむスリラー映画として楽しめていた分、後半からの抽象的なシーンの連続はひたすら辛かったです。

この映画の白眉はシガーという悪役だと言って間違いないでしょう。ポスター中央のめちゃ鼻でかい男がシガーです。
彼は映画内で最も個性的なキャラクターであり、同時に抽象的でもあります。凶悪な殺し屋でありながら恣意的に人をぶっ殺し、証拠を隠そうともしません。しかし、何故か警察に捕まりません。それどころか警察内では容疑者として名前が上がることすらありません。
これらの事象から、どうも彼は「暴力」という観念的な存在であることが示されています。
ここでいう「暴力」とはどうやら普遍的なものではなく、1980年ぐらいに突然勃興してきた「突発的暴力」であることが映画冒頭で明きらかになります。新興の概念に対するOLD MEN の悲哀こそが今作のテーマなのです。

これが私には全然ピンとこなかった。「キレやすい若者」とか日本でも問題になってたけど、私はその若者だった奴のガキの世代です。

親が祖父母よりキレやすかったのか。その子供の私たちは、もっとキレやすく育てられているのか。

私には全くわかりません。日本の暴力性の変遷すらわからんのに、アメリカのことなどわかるはずもなく、なんかボケーッとしてしまいました。

むしろ私にはその深い?テーマの部分が邪魔でしょうがなかったです。この映画の評価される箇所として、「緊張感」がよく指摘されます。事実、音楽の使い方に少し注意すれば、監督がこの映画の娯楽性として「緊張感」にどれだけ比重を置いているかは明解でしょう。しかし、監督がテーマを意識させるために抽象的に描き出したシーンの数々が、その「緊張感」を悉く削いでしまっているように感じました。

例えば、

なぜ超至近距離でマシンガンを打たれてるのにシガーに当たらないの? とか

なぜあのレベルの受信機でホテルの場所を正確に割り出せるの?とか

そもそもお前ら、索敵能力高すぎだろ! とか

アタッシュケースは自分の足で探すのかよ! 優秀な調査機関があるとかじゃねえのか!!

……で、見つけ出せるんかい!!
お前頭にレーダーみたいなんついてんの? 001なの? とか

突発的な暴力のアレゴリーの割には、お前おしゃべりだな! とか

喋れば喋るほど暴力性が矮小化していって、終いにはクレイマーじじいみたくなってるよね。 とかです。

この捨象されたリアリティの部分がストレスになって、「緊張感」を楽しめませんでした。


私が見ていて一番思ったのが「キャラ濃いは濃いけど、ダークナイトのジョーカーほどじゃないなぁ」です。
ダークナイトがアカデミー賞取ってないというモヤモヤがバイアスになってるのかもしれませんね。
こと悪役に関してはジョーカーが絶対的にオススメです。
タマル

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