Jun潤

20歳のソウルのJun潤のレビュー・感想・評価

20歳のソウル(2022年製作の映画)
3.4
2022.06.01

神尾楓珠主演作品。
そのおつよいビジュアルもさることながら、なんだか神秘的な雰囲気を放つ演技も見逃すことはできない。
知名度、演技力ともに今後ますます目が離せなくない。

ノンフィクション小説を原作とし、舞台となる千葉県船橋市立船橋高等学校に受け継がれている「市船soul」を、高校生にして作曲した浅野大義の短い生涯を映像化した作品。

吹奏楽に熱中する高校生・浅野大義。
彼は演奏ではなくよさこいの練習をする部活動と、顧問の高橋に辟易としていたが、徐々に音だけでなく仲間とのチームワークや、体の動きも合わせた音楽の魅力に惹かれていく。
やがて「市船soul」を作曲するまでに至り、高校卒業後は音大に進学して教室を目指すようになる。
しかし、病魔が彼の人生に立ちはだかるのだったー。

むむむ、こいつぁ…、24時間テレビのスペシャルドラマかな?
史実や実在の人物を基にした作品というのは大いに結構、ぜひともどんどん作っていただきたいのですが、今作はどうもドキュメンタリーを忠実に再現しましたよ、感の方が前面に出ていて、映画ならではのドラマティックな脚色が足りていませんでした。
人々の胸を打つ音楽と、生と死、家族や仲間、恋人、そして恩師との縁というのは、作劇の都合上こんなにもマッチした組み合わせは無いはずですが、音楽はストーリーをつなげるキーワード止まりで、作品を彩る演出には至っていなかった。

演技についても、神尾楓珠の綺麗な顔立ちと神秘的な雰囲気から繰り出される透明感のある演技が、浅野大義という人物の中に押し込められてしまっていた印象。
どちらかというと顧問の高橋の方が作品的なキャラクターをしていて、生徒を教え導き、教え子の現況を嘆き、遺志を後世に継いでいく、そんな物語上の役割が佐藤浩市の熟練した演技と噛み合ってしまった。

若者の死という、本人の感情だけでなく、家族や仲間、恋人の感情やその後の人生にも大きく影響を及ぼす出来事を描く中で、全部の主張が強いんだが弱いんだか、全体的な仕上がりは薄味でした。

ここからは超個人的な私見になります。
当人たちがどういう想いだったのか、実際の場の雰囲気や、制作陣が賭けた想いは推し量れませんが、個人的には、遺された人たちの自己満足でできた感動ポルノに見えてしまいました。
Jun潤

Jun潤