Lio

先生、私の隣に座っていただけませんか?のLioのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

ストレートな意思表示を一切せず、延々と婉曲な方法で、自らの意図を相手に想像させる黒木華が静かに燃える炎みたいで凄かった。

夫は元有名漫画家ぽいけど今はスランプで妻のアシスタントぽい事していて、その葛藤や複雑な感情が関係して不倫という形をとったかなと思った。

担当編集者の役どころも、ぶっ飛んでてよかった。漫画をこよなく愛し、自らの不倫さえ利用されることを良しとする姿勢は、一周回って清々しい。

この作品は妻の復讐だと評価が多いが、
自分にはどうしてもこれは、妻から夫への
最上級のラブレターだとしか思えない。

夫の停滞と己の前進が、夫の不倫や夫婦のアンバランスに繋がっていたことを彼女は感じていたと思う。
どんな手段であれ夫を漫画家先生に復帰させる事で、彼に生きる活力を与え、物理的に隣に居なくても、昔のように心を寄り添わせたいと思ったのでは。
そして、最後までグレーだった教習所イケメンのおかげで、今の夫の心は、妻の一挙一動に釘付けである。
服装の違いさえ気付かない無関心なあの頃とは大違いで、夫は今、妻だけを見ている。

静かな妻の目的は、すべて達成されたんではないでしょうか。
Lio

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