ILLminoruvsky

エンドロールのつづきのILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)
4.2
原題『Last Film Show』 (2021)

監督・脚本・美術 : パン・ナリン
撮影 : スワピニル・S・ソナワネ
編集 : シュリーヤス・ベルタンディ、パヴァン・バット
音楽 : シリル・モーリン
出演 : バヴィン・ラバリ、リチャー・ミーナー、バヴェーシュ・シュリマリ、ディペン・ラヴァル、他

両親に連れられて町の映画館に出向き、映画に魅了された少年が、映画館の映写技師と仲良くなったのをきっかけにますます映画の世界にのめりこんでいくさまを、パン・ナリン自らの実体験をもとに、全編溢れんばかりの映画愛を込めて描いたヒューマン・ドラマ映画。

「映画愛」映画。
「暗闇を照らす“光=映画"」映画。

いやぁ、良かったです。
映画の誕生、成長、死、そしてその再生を、映画に魅了された少年の成長と旅立ちに重ねながら描いた映画愛溢れる素晴らしい作品だと思います。名作。

映画館で暗闇を照らす“光=映画"に魅了され、"映画"が少年の人生を照す“光”になるという構成は巧いですし、その彼が映画の仕組みを自ら発見し映画の歴史を追体験しドンドンと魅了される姿は楽しい。

そして、フィルムからデジタルに上映システムが移行し、映写機とフィルム、「かつての映画」というメディア、表現形態の根源、その行く末を痛切に描き、しかしラストで「形を変えて」人々の暮らしの中で彩る鮮やかなモノへとなり、それを少年の旅立ちと共に着地させたのは感動的。

バヴィン・ラバリの自然な演技、撮影もホント素晴らしく、光の描写も繊細で、実に美しかったです。
リュミエール兄弟『ラ・シオタ駅への列車の到着』、スタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』、デヴィッド・リーン『アラビアのロレンス』、アンドレイ・タルコフスキー『ストーカー』などの名作オマージュもあり楽しいですし、母親が丹精込めて作ってくれる料理描写も素晴らしく全部ホント美味しそうでした。

そして、少年の「サマイ」っていう名前が、「時間」っていう意味も含め「映画=時間芸術」な所も芸が細かい。

あと、『ニューシネマ・パラダイス』をよく引き合いに出されますが、郷愁を描いた『ニューシネマ・パラダイス』とは本質的な部分で本作は全く違う作品になっている一作だと思います。

「主人公のサマイは何者かになりたいと願い、夢を抱き始める。私はそんな明るさと無邪気さをたたえる映画をどうしても作りたかった。自然かつ素朴で、時代を問わずに人間本来の生き方を思い出させてくれるような映画を」
- パン・ナリン -
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