ピロシキ

コーダ あいのうたのピロシキのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
3.5
オリジナルのフランス映画が個人的に全くピンと来なかったので(なんなら嫌い)、リメイクが劇場公開されても当然のようにスルーをかましていたが、先日のオスカーでの助演男優賞のスピーチにいたく感動したので、どうしてもミーハーにならざるを得なかった。

オリジナル「エール」でウンザリしたつまらないギャグの数々は「コーダ」にもあったけど、そのあたりはやや抑え目になり、主人公と家族を取り巻く描写がより丁寧になったと感じる。オリジナルからの変更点も功を奏している。何よりも、エールでは弟だったのがコーダでは兄に変わったことは大きい。主人公が家族の最年少になったことによって「家族の世話よりも自分の夢を優先する」という構図がより明瞭になったのではないか。

とはいえ、すっ飛ばしたような編集(一度もまともに喋ったことない男子を次のシーンではデュエットの練習のためにいきなり家に呼ぶなど)や、学園ドラマにおける既視感(とりあえず存在する名前も忘れたイジメッコの女子など)は、どうしても気になってしまった。

アカデミーの投票形式(全員1位から最下位まで決めるらしい)からも分かる通り、本作はきっと「皆にとっての3位」だったのだろう。もちろんそれでもじゅうぶんすごいのだけれど、やはりそれでは「突き抜けた1位」にはなり得ない。少なくとも、ドライブ・マイ・カーをやぶるような傑作だとは、個人的には思わない。いい映画なんだろうけどさァ、作品賞かェ!?という違和感を、ここに書き残す。

結局いちばん言いたいのは「神様、ジョニ・ミッチェルをありがとう」です。長生きしとくれよ!!
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