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コーダ あいのうたのykのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.7
家族の中でたった一人聞こえるルビーの葛藤も、聞こえない家族の葛藤も、傷口が痛むようにじんじんと滲みてきた。


歌の発表会の日、大好きな歌を歌う娘の晴れやかで自信に満ちた表情や、その歌声で涙を流す観客は見えても、肝心の歌が聞こえない父は静寂の中で所在なさげにしている。

その想像を超える不安感には、歌が盛り上がっていく瞬間での急な消音の演出で気付かされることになった。

複雑な思いを抱えた父が、発表会の夜、娘に「俺のために歌ってくれ」と頼み、歌う娘の頬や喉に触れて、その振動で歌を感じようとする。
多くの障壁を超越して、娘を理解しようとする父の愛は偉大だった。

離れても、自分の道を選んでも、家族を思うことはできる。
人生は決して、限られた選択肢の中で出来上がるものではない。
夢に繋がる舞台で、手話とともに歌い上げたルビーと、それを見る嬉しそうな家族は、希望に満ちていた。
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