Jude

コーダ あいのうたのJudeのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.7
初めて出会う感情に涙が止まらない、かつ好きな要素もりもりの素晴らしい作品でした。


ここ一年はドラマや軽めの作品を観るばかりだったので、久々に映画のパワーをがっつーんと受けました
いいってわかってる名作って腰を据えて見ようとずっと先延ばししてた本作

出だしから、あれ?漁業?海とか漁師とか好きな設定〜と掴まれ
字幕を絶えず読まないとなのもあるけど、もう目が離せなくなってしまった。。
たまにあるグッと引き込まれる作品
とばしたり、また後でと中断したり、やめてしまったりする作品もある中、没入してしまうやつ
いつも自分なり理由を探るけど、なんなんだろうこの圧倒的なパワー。

さておき、最も驚いたのは
経験した事のない感情、感覚を覚えさせてくれたこと。
ルビーが家族から、耳が聴こえないことが当たり前で、理解もされない、母親はしようともしてくれない、他意はないけど仲間外れされる日常。
聞こえる事が疑いのない普通で、基準はこっちだろうと思っていた感覚ががーんと覆えされたし、そのルビーの気持ちを想像するなんて、私の人生ではこれまでなかった。
お母さんが聴こえる事に恐れを感じるのと同様に、聴こえない(聴こえなくなるではない)という感覚に素直に恐れを感じた。
発表会シーン、家族の不安と感じている事を描く上手さにびっくりした。手持ち不沙汰でずっと客席を見回す様子。
私たち観客が期待していた肝心の2人の歌声は無音で終わる。ここをどの程度無音にするか監督は迷ったのか、最初から決めてたのか、ちょっと勇気のいる決断だったのでは。
いずれにせよ、聴こえないという感覚を、余計な悲壮感や辛さを含ませず、ありのままを実に上手いバランスで私たちに体験させてくれたと思う。この辺りから、感情というものを過不足なく描く手腕が上手い監督なんだなと気づき始めた。
そして、
お父さんがルビーの喉に手をあてて彼女の歌声を感じるシーン。なんて、なんて美しいのか。歌の素晴らしさをこんな描き方ができるのか。これまで出会った事のないシチュエーションで本当に心が震えた。

うわー、と胸に手を当ててこの気持ちを得れた事、経験した事のない感情がまだあるのかと頭が下がりました。
あと、こんなにも手話の下ネタを見るなんて恐らくこの先も無いとも思った笑

さてさて、その他にも
ルビーがマイルズと仲直りするのが、度胸試しの飛び込みって!!!!!なんちゅう青春の王道なんだ!!!!そのまま子どもの様に自然の中で夢中で水遊び。現代っ子が見せてくれるなんて思いもせず、しかも美しい池(川?)だし、風景最高の中でツボすぎて悶絶
浮いてる丸太越しのキスなんて、天才か!!!こんなん現代映画で見せてくれるんかい(2回目)

そして、見終わった後にまだびっくりした事が。
鑑賞中、兄ちゃんが憎まれ口たたいて、要らない意地はってと思ってたら
妹と家族を思ってのめちゃくちゃ漢気溢れる姿で、なんてかっこいいお兄ちゃん!
手話の演技にも本当に感服。
田舎、音楽、青春、兄弟の背中を強く押す兄貴、そしてどことなくあの子を彷彿させるマイルズ(あれから何年も経ってるから高校生役をなんてやってるはずないと思い込んでた)、ずっと大好きなシングストリートが頭にチラついてた。
鑑賞後に素晴らしいキャストの方々をチェックしたら、
ああああ!!まんまシングストリートの子じゃん🤣わざとキャスティングしたでしょ、もう笑

重いテーマに必要以上に引きずられず青春と音楽でバランスをとり、なおかつ色んな問題・葛藤に劇中にちゃんと答えを示し、最後は家族愛に落とし込めていたのにはとても感心しました。
Jude

Jude