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シン・仮面ライダーのKuutaのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.0
知人に勧められた去年のBLACKSUNはツッコミながら楽しく見たものの(テレレレー)、仮面ライダーへの思い入れは全然ないので、良くも悪くも変わらない庵野実写映画という印象でした。キューティーハニーみたいな映画をまたスクリーンで見られるとは、喜ぶべきなのか何なのか…。

シンエヴァの頃から「コピペ感」全開の敵モブCGや、2人が左右対称にガッシャンガッシャンぶつかる戦闘が魅力的に思えないのだが、庵野さん的にはハマっているのだろうか。シンエヴァはまだ虚構世界という理由づけがあったけれど…。

「これが庵野の意図したもの」「仮面ライダーはこういうもの」と言われたら、ああそうなんですねとしか回答しようがない映画なのだが、普通に洗練されたアクションが見たかった。空中戦のコマ落としはアニメ的で面白かった。

・ゴジラファンの端くれとして思うのは、シリーズの存亡が懸かっていたシンゴジラと違い、色んな解釈で今も作品が作られている仮面ライダーのブランドは、今作がコケても途切れる可能性は低かった、ということだ。自己流に徹した庵野氏という1人の仮面ライダーファンの姿勢、それを絶賛する一般のファンの反応を見ていると、非仮面ライダーファンを取り込む必要なんてないという、ある種の余裕を感じる。

(リブートやライダーの現代的意義を問う作品は今までも作られており、ゴジラよりも活発な土壌?だからこそ出来た作品だろう)

BLACKSUNと同様、ライダー50周年記念で一般的な知名度のある監督に好きに作ってもらった「企画もの」。「国民的監督の娯楽大作」という期待をこちらが勝手に抱いていたが、ファンダムの中でそっと愛されていく一本、という位置付けで最初から作られている。

しかし、揺れる、ブレる、暗い画面がオマージュと言われてもなぁ。オリジナルへのリスペクト、再現を優先しており、換骨奪胎して誰にでも面白く描き直す意欲は感じられない。オタクのリテラシーを前提とした映像が続き、一個一個拾って解釈しないと味がしない。見てて疲れた。

過去の技術の記録を試みる「巨神兵東京に現る」みたいな企画?とも考えたが、それほど特撮に力が入っているわけでもない。ファン向けのOVAならまだしも、長編映画として広く公開する意味は見出せなかった。

・市井の人を救う場面はない。怪獣と宇宙人がメインのゴジラとウルトラマンには、心情描写もへったくれもなく、周囲の右往左往と抽象的な会話で映画を進めてもそこまで違和感がなかったし、少なくとも、巨大なものが暴れるロマンはあった。

しかし等身大の人間がもがく今作は、そうした庵野氏の成功事例が封じられており、過去の実写映画のぎこちない話運びがそのまま立ち上がってくる。幸福を巡る議論、表面的な会話ばかりでアクションに回収できていない。主人公の「葛藤」は本当に描けているだろうか?

・人類補完計画や多様な世界への優しさなど、お馴染み過ぎる配置だが、コピーとオリジナル、虚構と現実を結ぶ一文字隼人だけはいい意味で異彩を放っていた。

・プロモーションが凄いが、資金集めて配信ドラマに出来たらもっと面白くなったはず。
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