ぎー

そして、バトンは渡されたのぎーのレビュー・感想・評価

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
4.0
「優子ちゃんと暮らし始めて、明日はちゃんと二つになったよ。自分のと、自分のよりずっと大事な明日が毎日やってくる。すごいよな。」
・原作は新幹線の中で初めて読んだ時に号泣して、涙や鼻水の処理に困った大好きな本。
・原作が良すぎると色んな意見があるけど、もちろん個人的には原作が好きだけど、すごく上手に映画化されたと思う。原作でも泣いたし、映画でも泣いた。
・離婚率も上がって、家族の形も多様になる中、多くの人に勇気と愛をくれる映画だと思う。主人公の優子は父親が4人もいる、簡単に言ってしまえばものすごく珍しい家庭環境で育った。でも、優子が幸せかどうか聞かれたら、僕は幸せだと思う。きっと愛情とかに血の繋がりなんて、ちょっと語弊があるかもしれないけど、関係ない。血が繋がってても残念ながら愛がない関係もあるし、この作品のように、かえって特殊な家庭環境だからこそ、より多くの人から愛情を貰えることもある。
・特殊な環境で育ったからこそ、幸せを呼び込むためにどんな事があっても笑顔で強く逞しく生きてきた優子が、初めて泣く場面は心を揺さぶられた。優子は幸せだったのは間違いないけど、やっぱり特殊な環境で生きる事は辛い事や我慢しなきゃいけない事も多いのだろう。
・最後の父親の森宮さんはとっても素敵だった。梨花さんは優子のために彼を探してたんだね。そして、とうとう見つけた。だから安心して死ぬことができたんだろう。
・高校の同級生の早瀬くんはイケメンだった。それらを持っていない側からすると、普通の家族がいて、お金持ちで、才能もあるなんて羨ましく思えるけど。でも、振り返ると優子は決して羨ましそうにはしてなかったな。純粋に彼のピアノの音が好きで、褒めてくれたことが嬉しくって、心が向いていったんだろうな。
・この映画で唯一惜しかったのは梨花の扱いかな。個人的には原作の扱いは、彼女の消失はそんなに大きくなかったはず。梨花の死をちょっと悲劇的に扱いすぎて、泣かせようとしてる感が出ちゃってた気がした。でもでも、もちろん総合的にはスーパー良い映画だった。
・梨花は子供が産めない身体だったんだ。奔放に見えたのに、実は誰よりも優子のことを考えていたんだね。親って本当にすごい。
・最初の父、水戸さんには夢があった。二番目の父、泉が原さんにはお金があった。今思うとそんな事どうでも良い。どうでも良くはないけど。なによりも大事なのは、二人とも優子を、梨花さんを愛していた。
・これは小説。多分現実はこんなに優しくない。こんなに多くの人から愛されるってすごく恵まれている事。
・でもあっち行ったりこっち行ったりしちゃうけど、現実の僕らももしかしたら気づいていないだけで、多くの人に愛された恵まれた環境で生きているのかもな。家族って本当に大切だね。
・永野芽郁が本当に可愛くって、特に声が素敵で、石原さとみは自由奔放に見える女性がぴったりだった。

⭐︎1番印象に残っているシーンは、結婚予定の早瀬くんと家族めぐりの旅をして、最初の実父に会う場面。多くの家族がいて、愛に囲まれていて、幸せだって優子が心から思えてる感じがしてとても温かい気持ちになった。

・何度も繰り返しになるけど、とってもとっても良い映画だった。でも、敢えて敢えて言うけど、原作が良すぎて原作には敵わない。最後の結婚式の場面の描き方は、もしかしたら卒業式の場面の描き方は、大きな差がついちゃったかもな。映画を見た後に改めて本を読んでそう思った。でも、家族や愛の大切さに気づける素晴らしい映画だった。
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