よっしい

ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言のよっしいのレビュー・感想・評価

3.1
「大虐殺はあなたの罪なのか」
「怖いのは、少数の危険思想家ではない。大多数の大衆である。」

ナチスドイツ政権下に生きた民間人や、実際兵役についていた祖父母世代にインタビューする、ノンフィクションのドキュメンタリー映画。

インドネシアでの大虐殺をテーマにした、アクト・オブ・キリングと同じく、加害者に当日の様子を聞くスタイルになっています。

ナチス強制収容所をテーマにする映画は枚挙に暇がありません。
フィクション作品との大きな違いは、その当事者が語ること。シンドラーのリストでは、最後に収容所の生存者が登場していましたが、あくまでもワンシーンであって、メインテーマではありませんでした。

改めて思いますが、ノンフィクションであるほど、見る側は想像力を強いられます。なぜなら、わかりやすく味付けされていないからです。
当事者も1から10まで事情をわかっていないのです。
だから、部分的なものだけ、自分が見聞きした内容だけを語る。しかも自分の主観で(場合によっては都合のいい解釈で)です。

真っ暗闇の中で象を触る人々の逸話が思い出されます。
人によっては蛇(鼻)を触ったという。人によっては大木(足)に触れたという。
人一人が、本当に感じたことは、全体像のほんの一部でしかない。それがよく分かる作品でした。

監督のルーク・ホランドはこのそれぞれの固定観点を小気味よく対比させてくれます。撮影者の言葉を極力少なく、編集で意図を伝えようとする。良い演出です。

面白いか、つまらないか、と聞かれたらレビューの通り、エンターテイメント性はありません。しかし、その基準ではなく、他のナチス系映画と並べて観てほしい一本です。
よっしい

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