Jun潤

決戦は日曜日のJun潤のレビュー・感想・評価

決戦は日曜日(2022年製作の映画)
3.6
2022.01.12

窪田正孝×宮沢りえ。

衆議院議員・川島の秘書を務める谷村は、川島が病に倒れたことをきっかけに、長女の有美の出馬を補佐することとなる。
ところが、有美は世間知らずな上に何をしでかすかわからないほどの奔放ぶり。
その上、現代の政治に対して苦言を呈する一方で、周囲はそういうものだからと改めることを考えない。
次第に有美の不満は爆発し、ところどころで騒動を起こすが、慣例や根回し、既得権益の確保によってそれもままならない。
選挙が近付く頃、川島のお見舞いに訪れた谷村は、父としての娘に対する想いを聞き、地方議員の傀儡として当選するのではなく、落選することを有美に持ちかける。
そして始まるさらなる有美の暴走・爆走・大闘争。
果たして、選挙戦の行方はー。

現実の政界や選挙を舞台にした。ドキュメンタリー調のポリティカル・シュール…、いや、かなり苦味強めなブラック・コメディ。

序盤の展開からある程度政治に対する知識が必要な感じは否めませんが、世間知らずで突拍子のない有美の行動が何か波乱を巻き起こすのではと思わせて何も起こらない、それどころか、行動を起こしてもすぐに封殺されてしまう描写に現代社会の闇というか、長いものに巻かれる、慣例に囚われる政界の濁りを感じさせてきました。

話の緩急的にも、有美の突拍子のない行動からの、揺るがない政治の世界、そこから逃れようとしてるはずなのにどんどん一石を投じていく有美の行動と、少し映画としてパンチの強さや印象の残り具合が足りないキャラにも感じましたが、どこか観応え、というか噛み応えのある作品。

キャラクターについても、細かい描写から谷村の真面目さ、子供への愛情を感じましたし、その愛情と川島親娘の愛情とがリンクして終盤の展開に繋がるのも自然でしたね。

アナログ感のあるカメラワークと画角に、間がない台詞の応酬と、いい意味で作り物感のない現実世界の延長のような世界観を感じました。

演技については、もう宮沢りえ一強でしたね。
他の役者陣も本当に政界に存在しているのではと思わせるものでしたが、やはり今作は宮沢りえでしょう。
旨味モリモリ噛めば噛むほど肉汁が溢れ出んばかりの見応えたっぷりの名演を魅せてくれました。

炎上やマスコミへのリーク、SNSのバズりなど、現実に近い世界観の中で、変わらない政界や変わるきっかけを感じさせるキャラクターなど、どこに向かわせるのかは不明ですがこれも一種のプロバガンダ作品かなという印象です。
Jun潤

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