eri

3のeriのレビュー・感想・評価

3(2012年製作の映画)
3.5
こんなお話:
夫・ラーム(ダヌシュ)の葬儀中、無気力にソファに横たわる妻・ジャナニー(シュルティ・ハーサン)はラームとの出会いを思い返していた。
学生時代、通学中に自転車が故障したジャナニーの元に来て、修理してくれたのがラームだったのだ。ラームはその後、彼女と同じ塾へ通ったり、行き帰りをバイクでついて来たりして、度々彼女へ愛をささやいた。そうしてラームとジャナニーは恋人同士になったのである。
ラームとの日々を思い出して泣き暮らすジャナニーは、ある日、ラームの上着から自分宛の遺書を見つける。ラームの死が自殺によるものだと知ったジャナニーは、ラームの幼馴染であるセンティル(スンダル・ラーム)を訪ね、ラームに何があったのか詰問する。
結婚前にジャナニーとセンティルがそれぞれの進路が決まった時から、ラームの精神が不安定になり、度々幻覚を見たり暴れたりするようになったと、センティルは語り始めるのであった。

良かったところ:
ダヌシュ×自己犠牲=地獄
ただただ辛い。

ダヌシュのどんどん負のスパイラルに陥っていく様とシュルティ・ハーサンが悲しみの渦に溺れる演技が光りに光っていました。
ジャナニーの記憶の中には、自分のことをとても愛していて一途でいじらしいラームしかいませんでしたが、センティルの語るラームは、ジャナニーを守るためにボロボロになっていく男でした。
帰宅するたびにケガしてきたり、愛犬がいなくなってもぼうっとして突然泣き出したりしたらジャナニーだって心配でおかしくなってしまう。
気が動転した彼女をみて、自分が守らなければ、と思って更にラームは自分を追い詰めるわけですね。
命を絶つ前に、眠るジャナニーを起こさないように、手を浮かせて彼女を撫で、幸せそうに微笑んでから悲しみに顔を歪ませ、嗚咽するあの表情。素晴らしいですがあまりに辛い。
ラストシーンは、何度見ても心がえぐれます。

監督はダヌシュの(当時の)奥様なのですが、なんでこの話に夫を起用したのか…
ダヌシュにしか出せない失望と苦々しさがあるのは百も承知ですが、思わずにいられない。

つらい目に遭うダヌシュが好きでたまらん人にはお勧めです。

あと、センティルは最初から最後までこれ以上ないくらいラームの良い友人でした。

もう少し!なところ:
地獄が過ぎるし、「自殺は解決にはならない」というメッセージもまた視聴者をどん底へと突き落とします。
余程メンタルが元気な時に観ないと、落ち込んでしまうこと間違いなし。
ラームとジャナニーはお互いがお互いを好きすぎたのかもしれません。理性が介在しない関係ってこんなに破滅的になってしまうのか、と背筋が冷えました。

結局タイトルの「3」ってどういう意味なんでしょうね。
ラーム+ジャナニー+ラームのもう一つの人格、という解釈もあるようですが、多重人格ではないような…。

救いがない、答えが示されない、という展開はリアルで良いのですが、実際に同じ症状で悩んでいる方にはとても勧められない内容の作品だと思います。

※EROS NOWにて視聴
eri

eri