名波ジャパン10

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)の名波ジャパン10のレビュー・感想・評価

4.3
超一流の音楽ドキュメンタリー。貴重な音楽シーン映像としてソウルミュージックファンはもちろん、歴史の1ページとして昭和世代必見の逸品。ともかく、19歳のスティービー・ワンダーのドラムソロを聴きたい人、ザ・フィフス・ディメンジョンのAquerius/Let the sunshine inのステージを観たい人は是非。それだけで元が取れます。伝説の野外フェス、ウッドストックが行われた1969年の夏、ハーレムの公園で6週間にわたって開催されたブラックミュージック野外コンサートのドキュメンタリー。当時のコンサート映像に出演者、観客の現在のインタビューを重ね、曲それぞれのドラマを描くという見事な演出。ザ・フィフス・ディメンジョンは当時ポップスを歌うことで、白人のグループと勘違いされていたり、黒人グループとして異端視されていた中、「黒人コミュニティのメッカであるハーレムで歌うことで音楽に人種や肌の色の違いはないことを訴え、同胞に受け入れて欲しかった」と語っています。また、当時はキング牧師暗殺の翌年であり、ハーレムでも暴動が多発していた中でこのコンサートの意味合いは極めて高かったことが判ります。ただ、この極めて貴重なブラック・ウッドストックの映像は黒人のイベントだったが故にメディアの興味は薄く、50年もの間日の目を見ることはありませんでした。ようやく公開されたことで、時代の変化を実感する一方、要した時間の長さに愕然とせざるを得ません。