Jun潤

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のJun潤のレビュー・感想・評価

3.5
2022.04.18

第94回アカデミー賞にて長編ドキュメンタリー作品賞を受賞した作品。
アフリカ系アメリカ人の音楽と文化を祝う「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」を検証。

1969年、政治的にも軍事的にも不安定な時代、黒人の黒人による黒人のための音楽フェスが催された。
その模様を、50年間地下に眠っていた当時の映像と、当事者達のインタビューに沿い、当時時代を席巻した音楽で彩りながら振り返る。

決して明るくはなく、闇を落とす出来事ばかりだった時代を、バックで鳴り続ける音楽が軽快にし、語られていく。
50年前の出来事でも今も当事者たちの記憶に深く刻まれている記憶。
観客、立役者などが、会場や出演者だけでなく会場の周りや当時の思い出も振り返っていく。

一つのフェスを通して、人が持つ強さや弱さ、歴史の闇、音楽が持つ人に与える希望という名の力強さなどが全体的な流れに乗って、メッセージ性をより強くして語りかけてきました。

当時の音楽や歴史には疎いものの、音楽に心を惹かれ、生きる活力が湧き、時が経っても色褪せない記憶として残る、その感覚はなんとなくわかる気がします。

曲自体に思い入れがなくても、なんとなく聞いたことのあるフレーズや曲調など、今の音楽にも通ずるものを感じました。
知らない曲でもついついリズムに体が乗ってしまう不思議な感覚です。

コロナ禍でライブやフェスの会場が満員になるというのが疎遠になりましたが、やはりこういう作品を見るとバラバラの人たちが、同じ空間を、そして同じ音楽を共有する瞬間というのはとてもいいものだなぁと想いますし、早くライブが無事に開催される日常が帰ってこないかなぁと寂しくもなります。

今作が扱ったものがたまたま音楽だっただけで、音楽でなくても、政治的な不安を解消し信じられるものの不在を埋め、心のそばに存在を感じるものは現代にも溢れているんだと思います。

ドキュメンタリーは授業だとか講演会などの堅苦しい場所で見るイメージが強いですが、やはりこういった文化的な視点から見つめ、思い出の記憶から歴史を知ることもまた重要だし、この方が作品として見た人の記憶に残り、後世に語り継がれていくだろうなと思いました。

国も人種も時代も政治的な隔たりも超えて人々の心を打つ音楽。
それは現代においても同等の意義を持ち、今聞いている音楽は、その記憶は、時代を経た時何を見せてくれるのだろうと、歳を重ねることも悪いことばかりじゃないと思える作品でした。
Jun潤

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